KNOWLEDGES Oct 30th, 2019

世間が大きく誤解しているAIの実態 人工知能ではなく「拡張知能」 宇野正人(株式会社アートリー)インタビュー

OUTLINE/ 概要

AIに関して、世間は大きな誤解を抱いています。そのために過大な期待や抵抗感を持つ人も少なからずいます。今回は、そもそも「AI」という言葉の持つ意味合いを整理することから始まり、現時点でのAIとは実際にはどのようなものなのか、私たちはAIをどのように活用するのがよいのかを解説していきます。

「AIとは人工知能だ」という大きな誤解がある

宇野:まず、世間のAIの概要に関する大きな誤解についてお伝えすると、「AI=人工知能」だと思っている方が非常に多いということが挙げられます。今から2、3年前にあるクライアントからIBM Watson(以下、Watson)を導入したいから、代わりにIBMが開催する3日間のセミナーへ行ってきてほしいと言われました。当時はWatsonが出て2年目ぐらいだったと思います。Watsonに関しては、世界的にも大きな話題になった出来事がありました。東京大学医科学研究所の教授が、大量の論文データを読み込ませたWatsonを利用して、医者では診断がつかなかったあるがん患者の病因を特定した、というものです。このことからもわかるように、Watsonは言わばAIの火付け役になっていたわけです。

世間一般的に言う人工知能のAIというのは、「Artificial Intelligence」の略です。「Artificial」は「人工」で、「Intelligence」は「知能」という意味です。しかし、もともとIBMがWatsonを出したのは、「Augmented Intelligence」つまり「拡張知能」という意味合いのものでした。両方とも頭文字がAIになるので、日本人の多くが混同してしまったようです。日本のメディアがそのような誤解を広めてしまったとも言えるかもしれません。それで、ターミネーターがやって来るのではないか、スカイネットワークで人間がロボットに支配される時代が来るのではないか、といった話が出てくるようになったわけです。でも、実際のところは今使われているAIは、拡張知能に過ぎないのです。

宇野正人
“AI”と人工知能の違いについて語る宇野正人

「AI=拡張知能」とはいったいどういう意味か

宇野:では、拡張知能とはどういったことなのか。例えば、さきほどの論文の話に戻って説明しましょう。もしも時間と驚異的な記憶力があれば、毎日何万と発表される世界中の論文を全部頭に入れて、必要な情報を組み合わせれば答えを導き出せるはずです。もちろん、実際そのようなことをできる人はいないと思いますが、拡張知能であるAIなら、スーパーコンピューターを使って毎日論文のデータを読み込ませることができるのです。それこそ、人間の脳では処理できない情報量を処理させる、つまり知能を拡張するということなのです。これがAIのすごさと言えるでしょう。

Watsonのセミナーには、ゲストとして天才的なインド人の小学生が出演していました。その子もAIのことを誤解しないでほしいと言っていました。結局AIはAugmented Intelligence(拡張知能)だから、今すぐターミネーターで描かれているようなことが起こることはないことを強調していました。AIの火付け役であるIBMのWatson側の人も、世間で考えられているAI(人工知能)と今実際に使われているAI(拡張知能)とは全く違うものだと言っています。

人工知能に繋がる取り組み「オープンワーム・プロジェクト」とは

宇野:いわゆる人工知能に関しては、今のところミツバチの脳を作るのが精一杯だそうです。もちろんそれでもすごいことですが。オープンワーム・プロジェクトというものがあり、そこではパソコンの中で線虫の脳を再現する試みが行われています。このようなプロジェクトが進めば、何十年後か分かりませんが、犬などのペットの脳をモニターの中で再現できるようになるかもしれません。100年後、150年後には、もしかしたら人間の脳もインストールできるようになる可能性もあります。そうなれば、亡くなりそうな人の脳や自分の脳を保存しておけることになります。さらには、アインシュタインやスティーブ・ジョブズや賢い人たちの若い時点での脳をインストールしアイディアを活用すれば、人類にとって非常に価値のあるものになるでしょう。優れた知能を持っている人たちのデータをインストールして永久に保存し、その知能に次々と新しいことを考えてもらうことができるわけですから。永遠に生き続けるのとは違うかもしれませんが、もしかしたらそういうことにも繋がっていくかもしれません。かなり先の話かもしれませんが。

今のAI(拡張知能)が得意なこととは

宇野:それでもやはり、今あるAIは素晴らしいものには違いありません。テキストデータを入れると瞬間的に多言語に翻訳したり、話したことをテキストのデータにしたりすることも出来てしまいます。つまり今のAIが得意としていることは、「非構造化データを分析して、構造化データに直す」ということです。以前の一般的なコンピューターでは、お問い合わせフォームに入っているような、氏名やメールアドレスなどの構造化されているデータしか処理できませんでした。しかし今ではAIを使うことで、こうやって自然言語で話していることやFacebookに書き込んだ内容、画像や映像データなどの非構造化データを全て処理できるようになりました。非構造化データを構造化データに直して再利用できることは、今のAIにおいては非常に重要なポイントで、それは次の新しいサービスやビジネスに繋がっていくでしょう。

以前よりずっと身近になっているAIと正しく向き合う

宇野:数年前にセミナーを受けた当時は、AIを導入するのにイニシャルコスト(初期費用)だけで2,000万円かかると言われました。ビジネスで利用するとどうなるのかと尋ねたら、ケースバイケースなので明確には答えられないとのことで、IBMの方が事務所まで来て説明してくれました。それが今ではもうIBMクラウドというサービスになっていて、Watsonの機能を使うためのAPIである「Watson API」というものも開発されています。Watson APIを使えば、私たちアートリーでもAIを使ったウェブアプリケーションを開発することが可能です。今誰でもAIを使って開発できる時代になってきているのは、なかなか面白いことではないかと思います。ですから、ターミネーターにおびえる必要もないですし、逆に人工知能はすごい、どうやって利用しようか、と過大評価する必要もありません。AIは拡張知能ということを理解し、皆でいろいろなアイディアを考えて活用していければいいのではないでしょうか。

まとめ

一般的にAIはArtificial Intelligence(人工知能)の略と考えられていますが、現在用いられているAIはAugmented Intelligence(拡張知能)のことです。人には処理できない大量の情報を短時間で処理する、つまり知能を拡張することができます。ビジネスや医療などの分野で人の仕事をサポートするもので、恐れる必要はありません。

宇野正人
宇野正人 宇野 正人 / MASATO UNO

株式会社アートリーのバックエンドを担当。
製造業2年、飲食店で店長業務に5年間従事した後、2017年アートリーに入社。未経験からプログラミングを学び、現在はさまざまなWebアプリ開発を担当している。

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