目次
1. 世界遺産でファッションショーができるかもしれない
2. 1,200年前から燃え続ける『不滅の法灯』
3. 歴史の未来をITで紡いでいく
4. 若者や世界へ日本の文化を「伝燈」していく
5. 日本が国際競争に負けていく「違和感」
2022年10月10日、1,200年の歴史を持つ比叡山延暦寺で、初となるオンラインイベント『伝燈LIVE』が開催された。ストリート着物ブランド『VEDUTA』のオンラインファッションショーを中心に、伝統工芸品のライブコマースや、比叡山延暦寺を巡るライブツアー、平和の鐘LIVEなどさまざまなコンテンツが供覧されたが、ここに至る経緯はどのようなものだったのか。全7本の記事に渡って、プロジェクトを企画したARTORY代表・佐藤丈亮(じょうすけ)に話を聞いた。(2022年8月時のインタビューに基づく)
1. 世界遺産でファッションショーができるかもしれない
2. 1,200年前から燃え続ける『不滅の法灯』
3. 歴史の未来をITで紡いでいく
4. 若者や世界へ日本の文化を「伝燈」していく
5. 日本が国際競争に負けていく「違和感」
2021年の年末、佐藤はストリートファッションとして和服を再解釈する着物ブランド『VEDUTA』代表でデザイナーの渡邉仁氏と食事をしていた。
渡邉氏と佐藤は、同い年で経営者、クリエイターとしてお互い認め合う関係で、6年ほど前に知り合ってから、たびたび仕事上でもコラボレーションを行っており、佐藤がソロアーティストとして活動する「JOSUKE」への衣装提供や、ブランドのスチール撮影など、公私ともに親交が深く、同世代の作り手として共鳴しあう戦友でもある。
佐藤は、2021年夏から日本三大稲荷・豊川稲荷ではじまった夜間参拝プロジェクト「YORU MO-DE(ヨルモウデ)」において実行委員を務めており、8月のオンラインイベントの総合プロデューサー兼ディレクターを、11月・12月の特別期間に同・寺宝館で開催された「着物詣〜七燈伽藍〜」において、京都「山口美術織物」協力のもと、テレビシリーズ「大奥」の着物によるプロジェクションマッピング作品である着物デジタルアートを企画制作し、NHKなどのテレビをはじめ、メディアやSNSからも注目されていた。
突如としてプロジェクトは動き出し、比叡山延暦寺に向けた提案書の作成にとりかかった。
「ただファッションショーをやるといっても、そこに比叡山延暦寺でやる意味が必要だと考えました。仏教についてさまざまな資料にあたるなかで目に留まったのが『不滅の法灯』です。“油断”の語源にもなっていて、1,200年前に最澄がつけた火が、いまだに毎日油を注がれて燃えているんです。最近はSDGs やサステナブルが社会的なキーワードになっていますが、延暦寺では1,200年も昔からすでにそれを実証してきたわけです」
延暦7年(788年)に最澄が一乗止観院を建立して以来、1,200年にわたって日本仏教の核心を育んできた比叡山延暦寺。天台密教の拠点として、平安時代以後、法然、親鸞、栄西、道元、日蓮など多くの高僧がこの場所で修行し、山を降りては文化の礎になっている。
「祖母の家には大きな観音様があったし、もっと身近なんですよね。インターナショナルスクールに通っていたので、周りにはイスラームやキリスト教徒の子がいたけど、個人的にはそれらに比べると仏教はより文化的なイメージがある。だから、資料作りのために仏教を勉強するのは、日本の文化や歴史を勉強しているようで楽しかったです。そうゆう意味では、仏教を「宗教」としてはとらえてはいなかったと思います」
プロジェクトが決まってからは、比叡山延暦寺にも幾度となく足を運び、麓から延暦寺の中心とされる東塔エリアまで車で約20分。山にはいたるところに寺院が置かれ、その規模の大きさには圧倒されるばかりだった。
「修行をする場所だから当然だけど、これを歩いて登っていたのかって。いわゆる観光地ではなく、完全に精神を鍛える場所なんですよね。これだけの場所で新しいイベントをやることのプレッシャーはもちろんあったけど、あまり意識しないようにしていました。とにかく自分にやれることをやるだけなので」
こうして決まった、イベントのコンセプトは『文化創生』。ARTORYは、比叡山延暦寺が1,200年つないできた日本文化を、ITの力で次の世代へと伝え広げていくことに挑戦することに決めた。
「もともとはファッションショーがはじまりだったけど、せっかく世界遺産の比叡山延暦寺なんだから、もっと広げて考えていいと思ったんです。渡邉さんとも密にやりとりをするうちに、ただ『ファッションショーをやりたい』だけでなく、服づくりで日本の文化を伝えていきたいという彼のアイデンティティの部分まで深くコミットしていきました。それは、僕がいまARTORYをやっている思いにもつながっていて、プロダクトを通して社会を作っていくことはそもそもが文化なんですよね」
こうして、VEDUTAの初となるコレクションは、ファッションショーの枠を超えて、次世代に向けて文化を伝燈する文化創生のプロジェクト「伝燈LIVE」に発展していくことになった。
「ARTORYは、もともとARTI FACTORY(アーティファクトリー)という社名で設立しました。『文化財の工房』を意味していて、そこにはアーティファクトを作りたいというコンセプトが込められています。ITの力を使いながら文化を創造することは、私たちがもともと持っていた目的のひとつなんです」
2022年のコロナ禍が収まらない社会状況を踏まえれば、体験型オンラインイベント『伝燈LIVE』が軸となるのは当然のことだが、今回はそれに加えて比叡山延暦寺という世界遺産からのライブ配信だったので、自ずと日本だけでなく、海を越えた世界への発信も意識した。
「『伝燈』というのは、師から弟子へ正法を受け伝えることを指す仏語です。僕自身、延暦寺のことを知れば知るほどすごい場所だと感心するばかりなので、これをもっと伝えていかなければいけないという思いでいます。そのためにも、伝統工芸の職人や、Z世代のインフルエンサーが比叡山延暦寺から文化の発信を担うコンテンツも多数用意しました」
そして、『伝燈LIVE』のメインコンテンツとなるのが『比叡山延暦寺 VEDUTA COLLECTION』。2018年1月に設立された『VEDUTA』は、伝統的な和服をストリートファッションとして再解釈する着物ブランド。イタリア語で「景色」の意味を持つこのブランド名には「世界中の人々が、当たり前のように日本の着物を着ている景色を作りたい」という想いが込められている。
「デザイナーの渡邉さんとの共通点は「愛国心」だと思います。やっぱり日本が海外に置いて行かれている状況はどうなのかなというのはあって。勝ち負けじゃないというかもしれないけど、競争って本質的に避けられないものだと思います。僕自身、インターナショナルスクールに行っていたこともあって、より日本国内の遅れを感じることが多かったんですよね」
子供の頃から持っていた「違和感」がイベントを通じて、佐藤を突き動かすき起爆剤になったとも考えられる。
それはまさしく、和服を再解釈して日本文化を次のステージへと押し進めていくという「VEDUTA」のビジョンにも共鳴するものだった。
Part.1 伝燈LIVE プロジェクトレポート
Part.2 伝燈LIVE プロジェクトレポート
Part.3 伝燈LIVE プロジェクトレポート
Part.4 伝燈LIVE プロジェクトレポート
Part.5 伝燈LIVE プロジェクトレポート
Part.6 伝燈LIVE プロジェクトレポート
Part.7 伝燈LIVE プロジェクトレポート
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