目次
1. 着物詣を舞台に、伝統文化がデジタルアートへ
2. 狐が着物の演出に化けるー。豊川稲荷ならではのストーリーを
3. ARTORYの発祥であるふたりが創り出す作風
4. スタジオ「ATELIER ARTORY」でプロジェクションマッピングの試作
5. 「ARTI FACTORY(文化財の工房)」への原点回帰
山口美術織物協力 豊川稲荷・着物詣を飾るデジタルアートへの取り組み
2021年11月5日(金)〜12月5日(日)まで、日本三大稲荷・豊川稲荷(豊川閣妙厳寺)で開催されている企画「着物詣(キモノモウデ)〜七燈伽藍〜」において、ARTORYは初めてプロジェクションマッピングによる着物のデジタルアート作品を制作しました。その制作背景ある、ARTORYが設立から抱いてきた想いを代表 佐藤丈亮(じょうすけ)が話します。
1. 着物詣を舞台に、伝統文化がデジタルアートへ
2. 狐が着物の演出に化けるー。豊川稲荷ならではのストーリーを
3. ARTORYの発祥であるふたりが創り出す作風
4. スタジオ「ATELIER ARTORY」でプロジェクションマッピングの試作
5. 「ARTI FACTORY(文化財の工房)」への原点回帰
「着物詣」は、ARTORYが実行委員会として参加してきた豊川稲荷による夜間参拝イベント「YORU-MODE(ヨルモウデ)」の関連企画として開催された新たな企画です。11月には「文化の日」もあることから、秋冬の特別期間を彩るスペシャルコンテンツとなっています。その名前の通り、テーマは「着物」。映画・テレビ・舞台や「大奥」シリーズ、十一代目市川海老蔵や主なキャストの衣装監修、制作・協力など多数実績を持つ山口美術織物株式会社の協力を仰いで、豊川稲荷境内「寺宝館」では実際に「大奥」などの撮影に使用された着物を展示しています。
「着物詣のコンセプトは『七燈伽藍(しちどうがらん)』。仏教では、寺院の主要な設備を総じて『七堂伽藍(しちどうがらん)』と呼びますが、それに発想を得て「堂」を「燈」に見立て、着物の展示だけでなく、着物羽織体験や撮影ブース、さらにご祈祷や精進料理といった7つの体験をしていただけるイベントになっています。そして、そのコンセプトの一翼を担ったのが、ARTORYによるデジタルアートです」(佐藤丈亮、以下同)
光と音の演出で、豊川稲荷に夜間参拝という新スタイルを提供してきた「YORU-MODE」はデジタルアートとの親和性がとても高いです。ARTORYは、着物という素材の特性を活かした新しい表現ができるのではないかという独自の視点から、「着物マッピング」を提案しました。
着物でプロジェクションマッピングするにあたって、もっともこだわったのは物語性です。
「ただ何かが動くだけでは、豊川稲荷で行う意味がありません。プロジェクションマッピングは、デジタルを持ち込むことで視覚的にリアルを拡張する表現です。なので、どこに設置されているのかという場所の意識がとても重要になります。このアートが豊川稲荷に置かれているという物理的な意味を持っていないといけないので、豊川稲荷ならではのストーリーを構成しました。」
白い着物が置かれた背景に登場するのは白い狐。七燈伽藍のコンセプトにもとづきながら着物を目まぐるしく変化させ、幻想的な世界で来場者をおもてなしするストーリーになっています。
「狐に化かされるようなイメージですね。デジタルアート自体は山口美術織物の着物を演出したコラボレーションではありますが、あくまでそれは狐が演出をしているという物語に落とし込んでいます。僕は作品を作る上ではすべてに意味がなければいけないと思っているので、プロジェクションマッピングはあくまでもその手段でしかないんです」
大小多くの狐が祀られた「霊狐塚」でも知られる豊川稲荷。まさに、この場所ならではのデジタルアートを作り上げました。
着物に投影する映像は、代表の佐藤と取締役クリエイティブディレクターの古市将揮が分業して制作しました。
「古市がモーショングラフィックスを作り、それをアートへと織りなすイメージですね。プロジェクションマッピングは初めての試みでしたが、以前、NTTアドバンステクノロジ株式会社様のご依頼でモーショングラフィックスを使ったアニメーションを手がけた経験が大きかったです。理屈としてやることは同じなので、初めての事例とはいえ強気で取り組むことができました」
ARTORYのデザインを支える古市が作ったアニメーション素材を、佐藤が手を加えながら映像へと落とし込んでいく。中学校からの同級生であり、同じバンドメンバーとして活動してきたチームワークも活かされています。
「僕としては、ミュージックビデオを作っている感覚なんですよね。土台のストーリーはありますが、着物の柄もBGMと連動させて動かしていくので、楽曲を制作している感覚に近い。そこは、これまでの音楽活動が活きているのかなと思います。映像ではあるけど、すごく自然にやれているんです」
プロジェクションマッピングする映像素材は滞りなく完成することができましたが、それを着物に投影する工程に、いままでと勝手の違いを感じさせられることもありました。
「やはりマッピング自体には工夫がいるんですよね。プロジェクターをどこにどう照射するのかという物理的な部分がどうしても重要になってきます。その面でいえば、自社スタジオ機能であるアトリエ(※スタジオ「ATELIER ARTORY」)の存在は大きかったです。実際に出力をしながら、どう見えるか調整を重ねていくことができました。マーケティングの面を考えると、もっとSNSで拡散できるようにセルフィーを撮りやすい仕掛けを作るなど、設営の部分に関してはクリエイティブを入れていける余地が、まだあるのではと感じています」
実は、これらの作業をわずか10日ほどの制作期間で行いました。
「企画にGOサインが出て制作作業に取り組めたのは式典の10日前くらいでした。普通だったらまず取り組むことが難しいスケジュールでしたが、時間がないことを言い訳にしたくなくて。豊川稲荷は、開山580年、日本三大稲荷にも数えられ、3が日には150万人が参拝するほどの由緒ある寺院であり、映画や舞台、テレビドラマなどの衣装を製作・監修する山口美術織物さんの作品を扱わせていただくわけですから。さらに、今回はオープニングアンバサダーとして女優の浅野ゆう子さんも駆けつけてくれることになりました。そういった貴重な方々とのお仕事ですから、当然ながらコンセプトをしっかり立てたものでなければならないわけです。それを10日間で制作させていただいたことは、逆に自信につながりました。反響の大きさも感じています。SNSでもたくさんの方が話題にしてくれていますし、当初は来場予定のなかった山口美術織物の社長とご婦人が、動画で見て気に入ってくださって会場まで足を運んでくださいました。それはとてもうれしかったですね」
着物詣の制作に取り組んだ佐藤は、改めてARTORYの設立当時のことを、思い出していました。
「ARTORYはもともと、ARTI FACTORY(アーティファクトリー)という社名で立ち上がりました。『文化財の工房』を意味するその名称には、アーティファクトを作りたいというコンセプトが込められています。着物詣の展示をしている豊川稲荷の『寺宝館』は、かつて国の重要文化財などが飾られていた場所です。まさしくアーティファクトですよね。そこに私たちが手がけたアートが置かれたことは、設立当時に抱いた理想に近づいた瞬間でもありました」
創業から10年が経ち、はじめて「アーティファクト」を作れたことは、ARTORYにとってとても大きなことだと感じています。
「WEBやブランディング、コンサルティングなど、ARTORYはこれまで様々な領域で仕事をしてきました。ですが、それらのクリエイティブはお客さまがいてのこと。クリエイティブとアートの違いはそこにあります。私たち自身が発信するアートを世の中のみなさまへ直接届けたい、その思いはずっとありました。偶然ではありますが、この『着物詣』では私たちの思い描いてきた本質的な仕事が実現できたのではないかと感じています」
着物詣は、私たちの新たなあゆみの一歩となりました。ぜひご覧いただき、これからのARTORYの挑戦に期待していただければと思います。
(文:森野広明/編集:蒲生徹郎)
会期:2021年11月5日(金)-12月5日(日)の金土日祝
10:00〜22:00(12時から13時は休館)
(※11月20日(土)21日(日)のみ10:00~20:00)
ニュースタイル夜間参拝「YORU MO-DE(ヨルモウデ)」同時開催
会場:豊川稲荷(豊川閣妙厳寺)
〒442-8538 愛知県豊川市豊川町1番地
問い合わせ:縁日参りプロジェクト実行委員会事務局
〒442-8540 愛知県豊川市豊川町辺通4-4 豊川商工会議所内
TEL 050-3623-4146
受付時間 10:00〜17:00
URL:https://yorumo-de.com/kimonomo-de/