
2022.09.29 放送分
【文化創生】文化を企業が作るには?
第100回アートリーアカデミア
THEME
【文化創生】文化を企業が作るには?
テーマ
文化創生
今回のテーマは「文化創生」。アートリーが事業に掲げる独自のもので、「文化振興」と「地方創生」を意味している。今回は「企業が新しい文化を作っていくには?」を軸に今回のトークは進んでいく。アートリーアカデミアでは、どのような答えを見つけたのかをご覧ください。
TOPICS
- 佐藤
- 今夜も始まりました。アートリーアカデミア。本日のテーマは、「社会のためになる文化を企業が創るには?」です。
- 井戸
- さっそくフリップを見ていきましょう。「文化創生とは」というフリップになります。まず、「文化」とは、「ある集団の中で共有されている『信条』や『価値観』、『行動』のことを言います。次に『創生』とは、「初めて生み出すこと」や「初めて作ること」を意味します。つまり、「文化創生」とは、「文化を再解釈して、新しい文化を創り上げること」を意味します。
- 蒲生
- 2017年4月に文化庁が「地域文化創生本部」というものを発足させたんです。それでそこが「文化財を活用した観光まちづくり」や「茶道や書道などの日本文化の振興」をサポートしていまして。そこから「文化創生」や「地域創生」などの言葉が派生していったわけです。そのため、今回は「文化創生」というテーマにしました。なお、次のフリップに「文化創生に該当する再解釈の事例」をまとめています。
- 井戸
- 「文化の再解釈事例」というフリップですね。滋賀県は、戦国武将・織田信長が築いた安土城を2026年の築城450年に向け、デジタル技術を活用することで、「焼失した天守を復元させるプロジェクト」を進めているとのことです。また、『タカラトミー』は、日本の伝統玩具であるベーゴマを「改良性」や「競争性」を発展させることで誕生させた商品『ベイブレード』や ビー玉遊びを発展させる形で、ビー玉を発射させる2頭身の人形玩具『ビーダマン』を発売しています。
- 佐藤
- 『ビーダマン』は懐かしいな。(※初代『ビーダマン』のシリーズは1993年に発売された。)
- 井戸
- 確かに、「懐かしい」ですね。
- 蒲生
- ちなみに、このフリップで取り扱われている内容を補足しますと。安土城は「1576年に築城された」ものの、「10年で廃城された」んです。しかもおまけに「資料もほとんど残っていない」というある意味「貴重なお城」なんです。それを「VR」や「MR」などの最先端技術を使って、「当時の様子を見える化させよう」という計画が進んでいます。また、『タカラトミー』社の場合は、日本の伝統的なおもちゃである「ベーゴマ」を「カスタマイズ可能な仕様にしたおもちゃ」にブラッシュアップさせることで、「全国規模の大会」が開催されるほどブームになったそうです。(※『ベイブレード』は2001年〜2002年にかけて男子小学生を中心に全国的なブームが巻き起こり、「全国大会が国技館で開催される」ほどの大流行を見せた。)あとは、『バンダイ』社からは、「ヨーヨー」を再解釈した『ハイパーヨーヨー』という商品も発売されていますよね。
- 佐藤
- 「歴史的建造物」だけでなく、「おもちゃ」のような「身近なもの」まで再解釈されているんだね。そもそも、「食文化」のように、「ライフスタイルそのものが文化」ということもあるだろうけれど。原)先生は「再解釈の事例」と聞くと何を思い浮かべますか?
- 原
- 例えば「最近流行り出しているもの」で言うと「シティポップ」と呼ばれるジャンルの音楽でしょうね。あれは「海外でブームになったことが逆輸入されてきた」わけだけど。(※日本の80年代シティポップのリバイバルブームは2010年代にYouTubeなどを入口に欧米のクラブでJ-POPブームが起こったものが2010年代後半になって日本国内に「帰ってきた」ことが発端とされる。)それから、「国内」で言えば、「昭和のもの」と言いますか……。
- 井戸
- 「レトロ」な……。(※最近では「1980〜1990年代」を懐かしんだり、「ポップなもの」として受け入れる「平成レトロ」というブームが起こっている。)
- 原
- そういうところが「国民性としてある」わけだから、「各企業が過去に世に出した商品などを掘り起こして再販する」みたいなことをしても良いだろうとは思うところですよね。
- 佐藤
- 「音楽」などのように「短い周期でリバイバルされる」系のもの……。例えば最近では「90’s(1990年代風味の要素)」みたいなものが「流行ってきている」わけだけど、その背景には、「第一線にいる世代が90’sで育っているから」という理由があるんだよ。だから、「文化は回る」なんて言うわけだけど。その理由は、「第一線で働く世代が『子どもの頃に影響を受けて育った文化を再解釈して出しているから」なんだよ。だから、「カルチャー的な流行は大体30年周期くらい」と言われるわけだけれど……。
- 井戸
- 「『30年周期』と言われる理由」について、今ようやく納得がいきました。
- 原
- 要するに「1世代回る」わけね?
- 佐藤
- そういうこと。だから、例えば30年後には「20’s(2020年代風味の要素)が来る」だろうね。要は今の「90’sに影響を受けている子たちが30代〜40代くらいになってくる」わけだから……。
- 井戸
- 詰まるところ、「何かしらの現在流行っている要素を取り入れたりしながら再解釈していく」ということですよね?
- 佐藤
- そういうこと。だから最近では「けん玉」も流行っているよね?(※けん玉の世界的なブームは2010年頃にアメリカで起こり、日本に逆輸入。日本では2017年の第68回紅白歌合戦から演歌歌手の三山ひろしが「けん玉世界記録への道」と称するパフォーマンスを行い2020年から3年連続でギネス記録を達成して話題になるなど、それなりにブームにはなっている。)
- 原
- 「世界大会」もありますものね。
- 佐藤
- だから「そうした背景はある」のかもしれないよね。それで、「安土城」の場合は……。これはおそらく「明智光秀が本能寺の変後に燃やした」みたいなことだよね?それに「歴史的で伝統のあるもの」の場合は、「さらにいくらでもやりようがある」ような気がするよね。(今回の安土城のように、)「進歩した技術を活用させること」で、「復活させよう」みたいな発想は「面白い」よね。……それで言えば、映画で「IMAX上映を観るために使う『3Dメガネ』も『そう』なる」よね? あれも俺らが幼い頃は、「赤と青のカラーフィルムを貼った」みたいな……。
- 原
- しかも、「3D」ではなく「立体視」と言ってました!
- 佐藤
- あれは「赤と青を重ねることで、立体的に見せていた」わけでしょう?(※おそらくここでいう「立体視」は「赤と青のカラーフィルムやレンズを装着させたサングラス」を利用した「アナグリフ方式」のこと。「アナグリフ方式」では、例えば右目に青、左目に赤のレンズが振られていることで、右目では「青色が消失した状態の映像」が見え、左目では「赤色が消失した状態の映像」が見えていることになる。また、左右の目で認識する映像は、6〜7cmのズレがあるため、これらが脳の「視覚野」で合成されることで、「浮き出たような映像に見える」という「視覚トリック」を利用している。) だから、「方式は違う(※2 IMAXは光の波長を変える「偏光方式」に別の3D出力技術を組み合わせた「ハイブリッド方式」と呼ぶべきものが使われている)」としても、「基本的な原理は似たようなもの」だよね?(※3 「左右の目で見える映像がズレているところを視覚野で合成させることで人間はものを見ている」という意味では原理は「全く同じ」。)だから、「VR」の場合も、「右と左で微妙にズレた映像を投影することで『立体』に見せている」わけだから……。つまりは、「技術のブレイクスルー」と「世代変化によるブレイクスルー」の2つが「密接に関わりあっている」と言うか……。
- 原
- その2つ(「技術」と「世代変化」)の「融合点」と言いますか「ミックスされるポイント」が「重要」なのでしょうね。
- 佐藤
- おそらくそうだろうね。渡邉さんはいかがですか? 「『VEDUTA』のオーナーとしてかれこれ4〜5年の間『文化の再解釈』をされている」わけですけれど……。
- 渡邉
- 実際、「ファッションもリバイバルされていく」ものです。例えば、2000年代に「Y2K(※「Year 2000 Kei(2000年系)」の頭文字をとったもので、厚底ブーツやルーズソックス、ミニスカートにへそ出しルックのような「ギャル系ファッション」を指した)」と呼ばれて、安室(奈美恵)さんなどがしていた「へそ出しルック」や「スヌーピーのTシャツ」が流行ったりしていますよね。ちなみに、僕は「文化の再解釈」という意味では「書道を取り入れ」たりなどをしています。ところで、『VEDUTA』では、「来期はアロハシャツを変えよう」と思っていて。なぜなら、「アロハシャツが流行った」のは、1960年代ぐらいに、石原慎太郎さんが弟の石原裕次郎さんらをモデルに、『太陽の季節』(※2 『太陽の季節』の原作に当たる小説は、1955年に発表。翌年に映画化された。)という小説を書いて。それが映画化された時に、「すごく短い短パン」……。……前回僕が履いていたようなもの(※3 2022年9月22日放送の第99回『オンラインイベント』で渡邉氏は「膝上丈の黒い短パン」を履いている)に、アロハシャツを着た「太陽族」と呼ばれるファッションが流行ったんですよ。それ以降も「 全身黒の『カラス族』(※4 1980年代に流行った「全身を黒のワントーンコーデで固めたファッション」を好んだ人々)」や「竹の子族(※5 同じく1980年代に流行ったファッションで、「カラス族」とは反対に、「独特のハデな衣装」で「屋外でディスコサウンドの曲に合わせてステップダンスを踊る」という行為に参加する人々を指す。名前は「自作ではない服を『ブティック竹の子』という服屋で購入していた」ことが由来とされている。 )」のように、「様々なブーム」と言いますか「グループ」ができていって ……。だから、この話の前の時点で丈亮さんが「30年周期」なんて言っていましたが、そこを踏まえると、それらも「リバイバルされる」ことで、「現代のトレンドになったり」もするので。 それから、もう1つおまけに、来年(2023年)の(『VEDUTA』の)テーマを先行して発表しますと、「ワンピース」なんですよ。もちろん、「有名な海賊マンガの『ONEPIECE』にあやかろう」という意味合いもありますけれど、「和服を全身に取り入れなくても1つのピースとして取り入れる」みたいな「1つのかけら」という意味合いもあるし、もっとも、「1つの平和」という意味もありますけど。だから、「様々な要素から海をテーマにしていこう」みたいな背景があるのですが……。
- 佐藤
- 要するに、「『仕掛け人が大人になってきた』ことで起こっているリバイバルもある」わけだよね。だけど、「太陽族」の場合は、「仕掛ける側が実際にそういうものがあったことを知らな」ければ、「仕掛けようがない」わけだから。そこは「世代」の話が大きいだろうね。だから、「『VEDUTA』には面白味がある」のかもね。要は「和服などの伝統的なもの」に加えて、「渡邉さんが影響を受けてきたファッションや音楽」も「背景に含まれてくる」から。言いたいこととしては、「歴史的な伝統文化」という「長期スパンのサイクル」だけでなく、「自分がティーンエイジャーだった頃のもの」などの「短期スパンのサイクルも含まれている」と言いますか……。大きなコンセプトは「文化の再生」みたいな「文化創生的なこと」で、短いものは「毎シーズンのテーマ」と考えれば、「割と組み立てられている感じ」がしますけれども……。
- 渡邉
- ちなみに、僕が手がける『VEDUTA』の各服にはそれぞれ「タイトルを付けて」いまして。今年(2022年)は、「『SLAM DUNK』(※1990年〜1996年にかけて週刊少年ジャンプに連載された井上雄彦のバスケットボールマンガ。1993年〜1996年にかけてアニメ化もされた。)などの「アニメ」がテーマでしたけれど。去年(2021年)は、全て「『Dragon Ashの曲名の文字り」で付けているんですよ。
- 佐藤
- 例えば、俺らが中1くらいの頃に流行っていた『Deep Impact』などの……。
- 渡邉
- 実際、『Deep Impact』の「I」を衣類の「衣」にして、『Deep 衣mpact』として、「服に衝撃を与える」みたいな意味合いの作品を作って、伊勢丹でのポップアップストアにも並べましたね。
TOPICS
テーマ討論
- 佐藤
- 言い直せば、「今のティーンエイジャーたち」が、「『VEDUTAに影響され」て、「30年後くらいに新しい文化を創生させる可能性もあり得る」わけだから。……そろそろ本題(課題)に戻ってみましょうか。
- 佐藤
- 「社会のためになる文化を企業が作るには?」ですが。ここまでの話では『VEDUTA』自体は「社会のためにはならない」かもしれないですけど、運営元としては一応「企業」だから、ある種の「発信するビジネス」と捉えても問題ないようには思うけれど。要するに、論点としては「社会のためになる文化をどうやって構築させていくか?」だろうね。そもそも、「会社自体が既に『文化』である」わけだし、「世に出したプロダクトが文化になる」こともあるわけだから……。確かに「解釈の仕方はいろいろとある」わけですが……。
- 佐藤
- (原)先生はいかがお考えでしょうか?
- 原
- これに関しては、「すごく難しいこと」だなと思っていて……。
- 佐藤
- それは、(文化を)「作る」ことがですか?
- 原
- そうです。要はお2人(佐藤と渡邉)の話を聞いていて、「文化創生」の「創生」とは、「新たに作る」というニュアンスで考えていたんです。もちろん、「再解釈の事例」もあるけれど、「既存のものを土台として、新たに何かを生み出す」と言いますか。だから「すごくハードルが高いこと」のようなイメージと言いますか。例えば、「VRでもう一度安土城を作る」にしても。そのためには「VRの精度を今以上に高くしていかなければならない」わけですよ。そうでなければ、「価値がない」わけなので。もちろん「安土城には有益な資料が残されていない」ことは、「本当に承知」の上ですが。そもそも、「城跡」という場所は各地かなりある(※日本の城跡は、「約2万5000〜5万箇所ほどある」とされる)ので、「社会ぐるみ」と言いますか、企業だけでなくその城跡が含まれる自治体などが「官民を問わず協力する」ことで、「作り直す」と言うか「再構築」させていく……。要は「史跡の作り直し」のようなことをしていけば、「地域の活性化」にも繋げられるので、「=社会のためになるのではないか?」とは少なからず思い描いたりしましたけれども。
- 佐藤
- だから、(原)先生のイメージする「文化創生」は、なかなか「規模感が大きい」と言いますか……。だから、どちらかと言えば、「文明創生」みたいな感じだろうね……。事実、「歴史の再解釈」は、「文明を遡っていく」みたいな話だから。とは言え、「安土城」は、もはや「伝説の城」だから。そもそも、安土城自体、「織田信長が何かしらのビジョンを持って、あそこに作った」わけだから。だからその「かつての栄光を再現動画として見られる」のであれば、「見たいな」とは思うし……。仮に「海外で同じようなことをする」のであれば、「バベルの塔」や「(ノアの)方舟」のような「(旧約)聖書の中の世界」のことになるのかな? それを「創生する」のであれば。「西洋文明の再解釈」みたいな感じで、「ワクワクする」し、「世界共通で社会のためになる」のかな? とも思ってしまったけれど……。
- 原
- あれ? もしかしなくとも(早々と「今回のソリューション」が)出てしまった?
- 佐藤
- 「社会のためになる文化」という観点から言わせてもらえば。今回やろうとしている『伝燈LIVE』は、比叡山延暦寺の「不滅の法灯」にあやかって、「燈を伝えていく」をコンセプトにやっているわけだよね。だから、「社会のためになる文化」とは、おそらく「次世代の文化が生まれるための『土台となる文化』を醸成していけること」が「真に良い文化」の定義のように思って。だから、少し前にナベちゃんが言っていた「安室ちゃんルック(Y2Kファッション)」も、「30年後くらいにリバイバルされる」とは誰1人「思っていなかった」わけだから。……とは言え、そのくらいに「若者」として当時の文化に触れてきた年齢層が、「今の文化を作っている」わけだから。つまり、「時代を超えて社会のためになる良い文化」を構築していくことが、「未来に繋がっていく」と言うか「未来の人たちのヒントになる」かもしれないよね。だから、俺たちが言うところの「燈を伝えられる文化を作ること」が、おそらく今「企業や生きている人たちに求められている『文化を構築していく価値」のように思えたわけだよ。
- 蒲生
- 社長の言いたいことをまとめると、「次世代や世界に向けて、『モノが残っていく』ような『文化の土台となり得る文化』を作っていく」わけですね。具体例を挙げるとすれば、「お寿司」などの「日本食文化」がそうでしょうね。
- 佐藤
- 要は「未来に伝えていく」と言えば、「表面的にも分かりやすい」けれど。とは言え、「もう1段階深いところの真相」を明かすと、未来の人が「自分の残した文化からどんな影響受けて、その先どういった文化を作ってくれるか?」までを考えながら深掘りしていければ、「面白い」ように思えて。……そもそもこれまで、「文化系の話題で取り上げてきたこと」は、「どこかしらネガティブ」だったから。例えば、「自分が苦心して考え出したデザインを(発展したテクノロジーによって)易々とパクられる恐れがある」みたいな。だから、どちらかと言えば「守ろう!」みたいな方向性の発想になりがちだけど。どのみち、「100年もすれば人は死んでいく」し。そもそも「30年後も自分は今と変わらないエネルギーで今と同じことをやれるか?」と問われれば、「分からない」わけだよね? だから、「次世代に継承していく」ことを考えるわけだよね。だからむしろ「ウェルカム」と言うか、「仕掛けていくチャンス」だと思っていて。要は「自分の構築した文化を発展させて さらにこの先どうなっていくか?」という余地まで残しつつ「大胆に仕掛けている」と言うか、「今の文化を踏まえた上で、30年後に違う文化とミックスされ合って、『新しい文化』になったら面白いだろうな」と言うべきか。そのためには、「現状では実現不可能」だとしても、それに関する記述を「小説」なり「文献」として「残しておく」ことが重要だろうね。要は、後世の人が、「先人がこんなビジョンを描いていたのであれば再現してやろうか」みたいに思わせられるように。例えば「レオナルド・ダ・ヴィンチがヘリコプターのイメージ図を描いていた」や「手塚治虫がマンガ内で高速道路を描いていた」などのように、「至る人」にはおそらく「先見の明」みたいな才があるのだろうね。だから、そうしたところを含めた「文化創生」を企業や組織が行なっていければ、「真に社会のためになる文化」は「自然と生まれてくる」のかな? とも思えて……。
- 原
- ということは、「全ての会社がそれをやり始めた」とした場合、「30年後にはすごいことが起こっている」だろうね。
- 佐藤
- それに、いわゆる「老舗」と呼ばれる系統の企業の中でも、「さらに発展している系統の企業」では……。……例えば、『竹中工務店(大手総合建築会社)』や最近では『トヨタ』や『三井』、『三菱』なども挙げられるかな? あの手の企業は「世代が世襲で受け継がれている」みたいなところがあるから、おそらくは「そういう想定でいる」だろうね。
- 原
- むしろ「文化の塊」だものね。
- 佐藤
- だから、そうした企業においては、「今自分たちがやっていること」は、「次の世代にも受け継がれていくもの」という想定だろうから。だから、「孫や曾孫の代」あるいは「100年後」には、「こんなふうになる」だろうから、「今のうちにこういう種を仕掛けておこう」みたいなことは「やっている」のだろうね。
- 原
- 例えば、トヨタには『オリジン』という「初代『クラウン』をリバイバルした車種を出した」ことがあるけれど。あれはさすがに「エンジンだけは現代の基準に合う物に載せ替えている」けれど、「内装は原典を踏まえて」いて、みたいなことだよね?
- 佐藤
- おそらくそれは「オマージュ」と言うか、「忘れられないように」初代クラウンに対して「リスペクトの意を示している」のだろうね。
- 原
- そういう意味では先ほどの「リスペクト」という表現は、「言葉としてグッと来た」のだけど。要は「過去の文化に対する敬意」みたいなものが、「形ある新しいものになることが大事」なように思えて。それこそ、渡邉さんの『VEDUTA』は、「着物に対して敬意を持っている」ように思えて。だから、(自分が受け継いできた文化をこの先まで)「どうやって残していこう?」という論点には、「すごくリンクしている」ような気がして。
- 渡邉
- ちなみに僕の場合は、「何百年も続いている京都の呉服屋さんなどには敵わない」ので、「そちらに対する敬意は払い」つつ、僕自身は「フック(入口)になる存在」になりたいと思っているんです。例えば、「食べ物」で言うなれば、「カレー」や「ラーメン」、「回転寿司」のような。なぜなら、(『VEDUTA』は、)「廻らなくてカウンターしかないお寿司屋さんにはいきなりなれない」ので。だから、「本当のお寿司(=正統派の和服)を食べ(着)」たければ、そちら(正統派の和服を取り扱う呉服店など)へ行ってください」と「ナビゲートするためのフック(入口)になりたい」んですよ。要は「こうした役回りを担うブランド」は「洋服では数多くある」ものの、「和服では見かけなかった」ので……。
- 佐藤
- 要は「懸け橋的な存在になりたい」というわけね?
- 渡邉
- そうです。元々僕は『VEDUTA』というブランドを「ナンバーワンでもなければ、クラシックでもない」という前提でやっています。もちろん、「ファストファッションではなく、デザイナーズブランドとして」という意識も忘れてはいませんが。だから、普通であれば、「ファッションブランドとのコラボとは無縁の伝統工芸の職人さんと絡んだ硬派で伝統工芸的な商品」も 作れば、「これから先の新しく開発されていくだろうテクノロジーも混ぜていく」みたいなスタンスでいますね。とは言え、根底にあるのは「着物文化に対する尊敬」ですね。
- 原
- (渡邉さんが)「尊敬」や「敬意」などを「すごく大事になさっている」ことは「疑う余地のないこと」だとは思っていましたが、本当に「そう」だったのですね。……そもそも日本は「様々な文化を混ぜ合わせて独自のもの作るタイプの文化を持つ国」だと思うので、「異なる文化をミックスさせていく」という土壌は「元々ある」わけですよ。だから、「この先生まれてくるもの」も、「混ざり合いながら幾重にも折り重なっていくもの」でしょうから。それこそ業歴の長い企業だけでなく、全ての企業が「これからの社会を考えていく」ことで、「日本文化の発信」という意味合いでも「海外に打ち出しやすくなる」だろうとは思ったのですが。
- 佐藤
- つまりは「SDGs」なんだよね。もちろん、「文化を持続可能化させていくこと」は「取り組んでいくべきこと」だけど。どのみち「SDGs」にも、「GAFAからの影響」や「地球環境に対する影響」などが「背景にはある」けれど。要はあれ(SDGs)で問われているのは、「今を生きている人たちだけが良ければそれで構わないのか?」だから。確かに、今はこうして、「豊かで平和」な……。……もちろん、「イエメン」のように、「豊かでも平和でもない場所もある」ことは重々承知だけれど。少なくとも「過去1万年くらいの人類史」で言えば……。……「文明」が誕生してから「大体6000年〜4000年ぐらい」だっけ? とにかく、そうした積み重ねがあって、「現代文明がある」わけだよ。とは言え、産業革命以降、急激に技術革新が進んで……。特に「電気」や「インターネット」などが発明されて以降、「急激に進歩している」わけだけど。「全てを置き去りにしてはいけない」よね。結局、「全てが積み重なって今ここにある」わけだから。そうは言っても、「人間はちっぽけな存在」だから、「目まぐるしく変化していく時代の中で自分たちが取り残されないように」と「目の前のことだけに一生懸命になってしまう」のだけど。だけど、この先俺に子どもができるかは……。「全然分からない」けれど。とは言え、「後世に伝えていくこと」は、「今享受している文化に対する対価として払う」ことで、「未来に続けていける」のであれば、「良いこと」だとは思うよね。……「良い感じのこと言えた」気がする……。
- 原
- 思わず「うん」と頷いてしまいます。
- 佐藤
- 七菜子が「全然しゃべっていない」から、「意見を聞いておこう」かな?
- 久田
- 面白かったです。
- 佐藤
- 番組が終わりになってしまう!
- 井戸
- 今日の回は面白かった……。
- 久田
- そもそも、「社会のためになる文化を企業が作るには?」ということ自体、「些か漠然と」していて……。……まず、「企業が文化を作る」こと自体、「ピンと来てはいなかった」ので……。だけど、『トヨタ』などの話を聞く中で、「どんな未来を見たいのか」を「誰しにも賛同してもらえるよう、形あるものとして残していくこと自体が既に文化である」ということが分かった途端、「ハードルが一気に下がった」と言うか、「ああ、そういうことか」という感じは……。
- 佐藤
- それならいっそのこと「誰もが」でなくても構わないのかもしれない。例えば「ゴッホもそう」だけれど、「生きている間は誰からも賛同を得られずに孤立した」みたいな話はよくあるけれど、見方を変えれば「尖っていた」わけだから。だけど、彼は「フォービズム」や「ドイツ表現主義」の人々に「再解釈された」わけだから。要は、現在の価値観からすれば「尖り過ぎていて意味が分からないもの」とみなされるかもしれないものでも、誰かがそれに「インスパイアされる」形で、「文化を継承してくれる」のであれば、もしかしなくても「一捻り加わる」だけで「『すごい文化』として世に広まる」可能性もあるだろうから……。
- 原
- その意味では、「安土城の話」も そうだろうけれど、「資料が残っていない」ものも少なからずあるわけですよね。だから、「この先の人たち」は、「使い捨ての世の中」ではあるけれども、「思い出やその時の考えなどを意図的に残すこと」もしていかなければならないのだろうね。
- 佐藤
- 今や「SNS上のコンテンツ」のように、「日々消費されるコンテンツ」が当たり前のようになってしまっているけれど。確か、「『IBM』の現社長が言っていた」ように思う言葉を借りると、「20世紀最大の資源」は「石油」だと言われているけれど、「21世紀最大の資源」は「情報」なんだよ。だけど、今の世の中には「相対的に価値が薄くなってしまう」ほど「情報が溢れている」わけだけど。要は多くの人が『TikTok』や「ライブ配信」などに夢中になってしまって、結局、「自分にフォーカスされていった」結果、「鏡のように」と表現すると「できすぎた感じ」に聞こえてしまうかもしれないけれど、自然と「ターゲットがパーソナライズ」されてしまっているとも言えるんだよ。だからそうした意味では、「社会そのものが1つの大きな文化である」とすることは「間違ってはいない」のだけど。とは言え、「1人1人が『後世に残していける文化』に気付くきっかけ」は「社会が作っていく必要がある」ように思うんだよね。ここまでずっと「大企業ばかり」を例示していたから、もう1社付け足すけれど。例えば『リクルート』社の場合は、「社員が独立する」ことで、「企業文化を伝えていく」スタイルだよね。要は「『リクルート社の文化』を根底に持つ会社」を「再生産していく」としても、「その結果、経済が発展していく」のであれば、「社会のため」にはなっていると言えるよね?
- 原
- 確かに、「ある種の社会貢献」とも言えるでしょうね。
- 佐藤
- 要するに「難しく考えがち」だけど、実際には「難しくはなく」て。純粋に「思い」や「情熱を持って」いれば、「文化は作れる」わけだから。だから、本当に必要なのは、「それ(文化創生)に『本気で取り組もう」という強い気持ちなんだよ。……言い換えれば、「誰かの顔色を見て作る必要はない」わけで。
- 原
- そんな気はしますね。「個々の発想が大事」と言いますか、「その時代に生まれて生きた人の発想」が「全ての根底にある」ような気がします。例えば「ルネッサンス期」における(レオナルド・)ダ・ヴィンチの数々の発明は、「現在の技術を持ってすれば、実際に作れる」わけですから。
- 佐藤
- 例えば「古代中国」を例に挙げれば、「孔子の『論語』」や「韓非の『韓非子』」、「孫氏の『兵法』」などが「今に至るまで何千年と残っている」わけだものね。
- 原
- あれは、後代の人々が「残すべき」と判断してきたから「残ってきた」わけでしょう?
- 佐藤
- だから、「人に何かを伝える」ためには「メッセージを間違いなく残していくこと」が大切なのかもしれないね。もちろん、「自分が輝くために」みたいなことを「気持ちとして前に出す」ことも大切だろうけれど。とは言え、「メッセージを誰かに届かせたい」と思うのであれば、そこは「なおざりにしてはいけない」だろうね。例え、「現状誰にも届かなかった」としても、「時代の流れの中で価値観が変化した」結果、「未来の人には届く」かもしれないし……。
- 渡邉
- 小説家の三島由紀夫さんも、「僕が今言ってることが同時代人に届かなくても構わないけれど、50年後や100年後に『ああ、分かった』と言ってくれる人がいれば良い」とおっしゃっているんですよ。(※おそらく「僕が死んでね、50年か100年たつとね、「 ああ、分かった 」という人がいるかもしれない。それでも構わん。」という発言のことかと思われる。)だから僕はそれをモチーフにして、赤い羽織に「花は散っていくけども、いずれ嵐が起きるだろう(※2 正確には「散るをいとふ 世にも人にも さきがけて 散るこそ花と 吹く小夜嵐(散ることを嫌がるこの世でも、人に先駆けて散ることこそが花なのだと言わんばかりに夜の嵐が吹く)」)」という彼の辞世の句をあしらったわけですが。あとは、「北一輝」という「革命思想家」がいるのですが、彼の思想は「当時の日本には早過ぎた」結果、「二・二六事件の思想指導者だ!」とみな なされて処刑されたのですけれど……。だけどその後に彼の『日本改造法案大綱』という著作の7割を「GHQが採用して、『日本国憲法』を作っている」ので、「ホームラン級の大ファールを打った人」とも言われているのですが……。要は「時代が合わなかった」と言いますか、当時の「天皇至上主義」の日本首脳部からすれば「鬱陶しかった」のでしょうけど……。そもそも彼は、「中国で孫文を手伝って辛亥革命を成功に導いた」ことが原動力になっているのですが。……ちなみに、もう1つおまけを言うと、彼(北一輝)は、「僕の高校の大先輩」なんですよ。彼は「1期生」で、僕は「100期生」なのですが。だから、彼の「100年ほど前に発行された『漢字とカタカナしかない本』も読んで」いまして。だから、「歴史や世界遺産を知る」ことで、「先人が何を伝えようとしたのか?」を知れば、「僕らが未来に伝えなければならないことが見えてくる」だろうと思います。だから、世界遺産は皆さん「ぜひ見て」ください。その一端として、我々は『伝燈LIVE』を開催します。要するに、「(2022年)10月10日を楽しみにしていただきたい」わけです。
- 佐藤
- ……そろそろ時間なので、ソリューションに移りたいと思います。
- 井戸
- よろしくお願いします。
- 佐藤
- 本日のソリューションはこちらです。「伝燈する文化創生を」。
- 井戸
- 「伝燈」を入れてきた……。
- 佐藤
- 「後世に向けて燈を伝えていく」、すなわち「メッセージを込めて活動していくことが文化になる」と言いますか、「今を生きることが文化になる」ような気がするんだよね。
- 原
- 「カッコ良い」! だけど「そう」ですよね。
- 佐藤
- だから、「メッセージを込める」と言うか、「信念を持つ」ことが大切だろうね。例え、「言葉になっていなくても構わない」かもしれない。結局は、「受け取る側が意味を見出す」わけだから。とは言え、「信念を持って活動する」ことで、いずれはそれが「文化となって誰かに伝わる」はずだから。そもそも、「企業は個人の集合体」だから。それが「文化を作っていく土台になる」のかな? だから、「未来に燈を伝えていく文化」を作れれば、それは「生きている人の最大の価値となる」ように思いました。
- 原
- 素敵です。
- 井戸
- ありがとうございました。
- 佐藤
- 実は今回で『アートリーアカデミア』は「記念すべき100回目」でした。
- 原
- すばらしい!
- 佐藤
- だから、この番組も「文化の1つになれれば良い」よね。
- 原
- そもそも、「続いていることがすごいです。
- 渡邉
- 実際、「続けていくことは大変」と言うか「難しい」ですからね。
- 井戸
- 始まったのは、去年(2021年)……? ……一昨年(2020年)か……。(※『アートリーアカデミア』の初回放送は、「2020年11月5日」。)
- 佐藤
- ということは、「2年半くらいはやっている」わけでしょう? あ、違う……。「ちょうど2年」くらいか。次は「1000回を目指そう」か……。……「1000回」では「20年かかる」わけか? (※「1年は52週」なので、1000を52で割ると「約19.2」。そのため、正しくは「およそ19年2ヶ月かかる」と言える。)
- 井戸
- 頑張ろう。
- 久田
- 次のアニバーサリーは「えらく先」なんですね……。
- 井戸
- 「200回」みたいに「100区切り」ではないのか……。
- 原
- 相当ですね。『徹子の部屋』級ですよ?
- 佐藤
- それ(『徹子の部屋』)は「もっと長く放送されている」気がするけれど?
- 原
- そうですね。(『徹子の部屋』の放送開始は、1976年(昭和51年)。放送年数は48年。回数では10000回以上に当たる。)
- 佐藤
- でしょう(笑)。「先人たちをリスペクトする」ではないけれど。本日もありがとうございました。
- 井戸
- ありがとうございます。次回以降の放送はこちらの通りとなっています。次回も木曜日の夜10時にお会いしましょう。
- 佐藤
- 来週もお楽しみに! 最後までご視聴ありがとうございました。さよなら。
番組の感想をシェアしませんか?
みんなに共感を広げよう!
RECOMMEND おすすめ番組
CSV経営で社会貢献が経営の中心に?社会貢献と収益性を同時に追求するには
2024.04.18 放送分
グリーンオーシャン戦略で開く新たな市場!社会課題をビジネスチャンスに変えるには
2024.04.11 放送分
2030年、ビジネスケアラー対応が問うもの!介護と仕事の未来図を作って⼈材戦略を強化するには
2023.12.07 放送分
脳の多様性が競争力を生む?ニューロダイバーシティを推進してビジネスを発展させるには
2023.11.23 放送分