MAISON COSME LAUNCH COLLECTION
MAISON COSME | 化粧品製造 | 3ヶ月

企画コンセプト設計ブランディングアート制作動画撮影映像制作作詞音楽制作


新しいヘアケアブランドのブランディングプロジェクトとして、世界観の一環となるプロモーションムービーを企画・制作しました。ブランド全体のトーンに沿いながら、シャンプーとトリートメントが持つ“香り”や“質感”といった非視覚的な体験を、詩的で没入感のある映像表現によって可視化。視覚・聴覚・感情に訴える映像体験として設計しました。

物語の舞台となるのは、“とあるメゾン”を中心に構想した架空の街。イラストレーションから描き起こしたペーパークラフトを実際にジオラマとして組み立て、立体的な空間に仕上げました。撮影には、マクロプローブレンズ「LAOWA 24mm F14 2X MACRO PROBE(Cine)」を使用。まるで“手作りの街を訪れる”ような親密で詩的な視点を作り上げ、シネマカメラ「Canon EOS C300」によってディテールと空気感を丁寧に描いています。また、シャンプーの“インバス体験”を想起させるため、水を使った演出も実施。香りが立ち上がる瞬間を象徴するように、特注のアクリル水槽を用意し、光と水が交差する透明感のある映像に仕上げました。ハイブランドメゾンの香水表現にも通じる技法を取り入れ、映像に一層の余韻を加えています。

ナレーションには、本プロジェクトのために詩を書き下ろし、映像と呼応する語りとして採用。街に漂う香り、すれ違う人々がまとう余韻、香りが心に染み渡る感覚などを繊細な言葉で描いています。香りと記憶が交差する詩的な表現が、“物語を感じる体験”として作用し、ブランドの哲学や幸福感をより深く印象づけています。

音楽もオリジナルで書き下ろし、エリック・サティの「Gymnopédie No.1」をアレンジしました。曇り空の街に静かに光が差し込むような落ち着いたピアノ音色とクラシックな3拍子で物語が始まり、シーンが“メゾンのバスルーム”に移るタイミングで4拍子へと切り替え、ときめきの瞬間を演出。ピアノの音色も淡く内省的な響きから、軽やかで明るいトーンへと変化させ、視覚だけでなく音でも体験の質感を描いています。さらに、水音のようなニュアンスにはアナログシンセサイザー「SEQUENTIAL Trigon-6」を使用し、きらめきと立体感を演出。低域には「Moog Subsequent 37」を用い、シンプルながら芯のあるベースで全体に厚みと躍動感をもたらしました。

企画段階から、世界観の言語化と並行して、“香り”“質感”“余韻”といった要素を物語としてどう翻訳するかを丁寧に設計。実写とアニメーション、クラフトと水、音と言葉を織り交ぜながら、香りに誘われて街を歩くような、記憶に残る映像表現を目指しました。