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マーケティングが成功の鍵になった
比叡山延暦寺 VEDUTA COLLECTION × 伝燈LIVE
夜の阿弥陀堂をランウェイに。
ファッションショーを通じて、
伝燈の灯明をかかげる
2022年10月10日、1,200年の歴史を持つ比叡山延暦寺で、初となるオンラインイベント『伝燈LIVE』が開催されました。アートリーは、ストリート着物ブランド『VEDUTA』のオンラインファッションショーを中心に、伝統工芸品のライブコマースや、比叡山延暦寺を巡るライブツアー、平和の鐘LIVEなど、多彩なコンテンツを制作しました。
比叡山延暦寺という世界遺産でファッションショーを開催するという試みは、これまでに前例のないもの。そのため、企画・準備から当日の運営に至るまで、挑戦的なアイデアと緻密な戦略が求められました。その中核を担ったのが、マーケティングとクリエイティブな演出だったのです。

比叡山延暦寺でファッションショーを行う意義
比叡山延暦寺でのショー開催を目指して、私たちがはじめに取り組んだのが『伝燈LIVE』の立ち上げです。まず、比叡山延暦寺でファッションショーをやることの意味が必要だと考えました。
私たちが目を惹かれたのは『不滅の法灯』という概念です。この灯は、最澄によって1,200年前に点され、今もなお燃え続けています。SDGsやサステナビリティは現代の社会的なキーワードですが、比叡山延暦寺はそれよりもずっと前からこのような持続的な取り組みをしてきたのです。こうした背景から、イベント全体のコンセプトを『文化創生』とし、日本の歴史や文化をITとクリエイティブの力で次世代へと伝えることを目指しました。

2018年に設立された『VEDUTA』は、日本の伝統的な和服をストリートファッションに再解釈するブランドです。ブランド名には「景色」という意味が込められ、世界中の人々が当たり前のように着物を楽しむ未来を目指しています。この理念は、『VEDUTA』代表でデザイナーの渡邊仁氏の「日本の文化を服を通して伝えたい」というアイデンティティに深く結びついており、今回のプロジェクトのテーマとも合致するものでした。

伝統と革新のバランスがショー演出のこだわり
『比叡山延暦寺 VEDUTA COLLECTION』は、『伝燈LIVE』のメインコンテンツとして、衣装、演出、そして音楽に至るまで徹底的にこだわりました。
ショーの構成はDIORの2022A/Wコレクションを参考にしています。ヨーロッパでは、雰囲気のある古い建造物でショーが行われることがよくあるのですが、寺も日本の伝統的な歴史のある場所です。VEDUTA COLLECTIONの“景色を集める”という意味に合致することはもちろんですが、1200年にもわたって日本に文化を発信し続けてきた場所として、オーセンティックなリスペクトを込めています。

アート性を追求するために、ステージのライティングは落ち着いた雰囲気を演出しています。メインステージとなる阿弥陀堂前には、アートリーが所有するステージを設営し、周囲にテープライトを貼り付けています。そこに地面から2台のパーライトと、遠目から2台のパーライト、さらにサイドから2台の照明を当て赤く染めあげました。
ただし、人物や衣服は赤くしたくなかったので、ステージ正面と、回廊の始まりと終わりに白い照明を設置し、細かな調整を加えています。回廊の床には灯籠をイメージして、撮影用ライトを28基立て、間接照明のような柔らかさを表現しました。

ショーの音楽は、延暦寺で実際に録音した鐘の音をサンプリングしたものを使用しました。鐘の音をベースにしたサウンドは、時代の移ろいと新しい要素の融合を表現し、イベント全体のテーマである「伝統と革新」を象徴しています。

ショーを配信する映像もシネマクオリティにこだわっておりCanon EOS C70を4台と、EOS C300を1台の計5台を用意し、カメラワークも入念に研究を重ねました。

このように、『比叡山延暦寺 VEDUTA COLLECTION』は、ただのファッションイベントではなく、文化を伝えるための重要な試みとして位置付けられました。そこに、アートリーがこれまで培ってきたブランディング力が活かされているのです。
成功の鍵を握った「モデルオーディション」
当初の予定よりもショーの規模が大きくなったことで、既存のコレクションのほかに新作を取り入れることになりました。そのため、衣装を着用するモデルの人数が必要になりました。そこで、私たちは全国規模のモデルオーディションを行うことを決めました。これこそが、『比叡山延暦寺 VEDUTA COLLECTION』成功における重大な鍵となったのです。

オーディションには、17歳から50歳まで、年齢・国籍・ジェンダーを問わず380名の応募がありました。審査は書類選考と360度自撮り動画の一次審査、スタジオでの面接とウォーキング審査、そしてWEB投票による最終選考という流れで進められました。
もちろん、ただオーディションを開催するだけではいけません。シネマカメラのクオリティで参加者にとって最高の映像や写真を撮影することで、拡散のための動機作りをしっかり意識しました。
これはアーティストやモデルとして20年以上もの活動歴を持つ、アートリー代表の佐藤自身がオーディション参加者の気持ちを理解していることも大きかったと思います。つまり、プロジェクトを自分ごとのように参加をしてくれる熱量を持った人たちを、どれだけ作れるかがとても重要なことだったのです。

頑張っている方たちは、毎日InstagramやFacebookなどソーシャルメディアでの配信で応援を呼びかけていましたし、最初は恥ずかしがっていた方たちもだんだん応援をもらえるようになり、審査が終わる頃には“すごくいい経験をさせてもらいました”と感謝のメッセージをくれました。ファンの声や自分の存在意義を再認識し、ブレイクスルーの機会を得た若い参加者も多かったようで、それは私たちにとってもとてもうれしい結果でした。
マーケティングは企画と結びついていなければいけない
このように参加者がSNSを駆使して自らのPRと応援を呼びかけたことで、わずか1週間で21,755票が集まり、9,163人の新規ユーザー登録がありました。この応援投票がファッションショーへの注目度を高め、当日のオンライン視聴者数は25,778人、PVは193,831を記録しました。
『伝燈ライブ』の純広告費は30万円でしたが、ユーザー登録数で割るとひとりあたり約30円。しかも、ひとりひとりのエンゲージメントがとても高い。これは驚異的な数字です。やはり、人の夢にかける想いには、ものすごいエネルギーやパワーがあるのだと改めて思い知らされました。
マーケティングは絶対に企画と結びついていないといけないと私たちは考えてます。SNSはあくまでプラットフォーム、インフラしかでしかありません。なにかを告知したい場合、PR記事をばら撒くだけの単純訴求では、どれだけ広告費をかけられるかの勝負になってしまいますが、そこに“なに”を“どのようにして”バイラル(コンテンツがSNSやインターネットを通じて急速に広がり、多くの人々に共有される現象)させていくかがとても大切です。企画性やイベント性があって、そこに人を巻き込む力があれば。広告費1円の価値を何倍にもすることができる。それこそがマーケティングをプロデュースすることの醍醐味なのです。

アートリーの培ってきたブランディング力とマーケティング力
このように、『比叡山延暦寺 VEDUTA COLLECTION』のオーディションは単なるモデル選びだけでなく、バイラルマーケティングの一環として機能しました。参加者たちは、自分のSNSでオーディションの様子を発信し、その応援がどんどん広がっていきました。これにより、広告費をほとんどかけることなく、大きな波及効果を得ることができたのです。
アートリーは、オーディションを通じたバイラルマーケティングや、SNSを活用したファンベース作りに強みを持っています。2015年にも台湾において、アートリーが運営する美人女性モデル専門のストックフォトサービス『美scene』の公開モデルオーディション(http://bi-scene.com/audition01/)で成功を収めており、SNSを活用したノウハウを蓄積してきました。この成果は、ファッション分野に限らず、クリエイターを対象としたコンテストなど、さらなる可能性を秘めています。アートリーがこれまで培ってきたブランディング力とマーケティング力が、また新たなるプロジェクトの助けになれることを私たちも期待しています。(文:森野広明)

<VEDUTA COLLECTION>
https://dento-live.com/live_commerce/fashion_show/archive.php他のプロデュース事例を見る
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