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事例紹介
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国立大学法人茨城大学 |
教育(国立大学)
施策サマリー
メタバース企画・設計 / 空間デザイン / システム開発 / NGワード・言い換え提案機能実装 / 管理機能実装 / 教職員向け研修 / 運用・保守支援
茨城大学教育学部附属学校園では、教室での学習や集団生活に困難を抱える児童生徒への支援体制の整備が検討されていました。附属小学校、附属中学校、附属特別支援学校の3校園を擁する同学園において、在籍する児童生徒の多様性に対応する環境づくりが、学校運営上の論点として位置づけられていたためです。
検討の中心にあったのは、「教室復帰を直接ゴールに据えない段階的な支援の仕組み」という視点でした。いきなり対面の教室に戻ることへの心理的負担を軽減しつつ、学校や友人とのつながりを維持できる環境を用意する——この中間地点をどう設計するかが、整備すべき支援環境の要件として整理されていました。
そこで検討対象となったのが、メタバースを活用した支援環境の構築です。対面ではない形で学校とのつながりを保ち、児童生徒が自らのペースで段階的に関われる場を、どう設計・運用するか。この要件に応える実装が、茨城大学教育学部附属学校園として求められていました。
ARTORYが設計した空間の位置づけは、教室の代替ではなく教室に戻るための「段階」です。対面のコミュニケーションに直接戻るハードルが高い児童生徒でも、アバターを介してであれば参加しやすくなる。教室に入れない時期でも、オンライン空間を通じて学校との接点を保てる。こうした中間地点として機能させることを、設計の中心に据えました。
導入時の心理的ハードルを下げるため、参加環境は可能な限り簡素化しています。専用アプリのインストールや3Dゴーグルなどの特殊機器は不要。Windows、iOS、Androidのいずれからも、ブラウザでURLにアクセスすれば入室できます。児童生徒が「やってみよう」と感じた瞬間にそのまま参加できる導線を実現しました。
当初はメタバース空間内にエントランスを設ける構想もありましたが、利用導線の簡素化と全体設計の最適化の観点から、Webページから直接入場する構成へと変更する提案をARTORYから行い、採用されました。機能面と予算のバランスを取りながら、本来の目的である「子どもたちへの居場所提供」を優先した設計判断です。
附属小学校、附属中学校、附属特別支援学校の3校園は、児童生徒の発達段階もニーズも異なります。本プロジェクトでは、共通のデザインと機能をベースとしつつ、各校園のエリアを分岐させる構造を採用しました。3エリアの機能・デザインを基本的に統一することで開発コストを抑制しつつ、各校が実際に保有するシンボルをNPCとして空間内に配置することで、「自分の学校らしさ」を感じられる設計としました。
各エリアには、参加者同士が一堂に会して会話できる「談笑スペース」、一対一で落ち着いて話せる「プライベートスペース」、学校からのお知らせを確認できる「掲示板」、空間に親しみを持てる「シンボルツリー」などの要素を配置しています。シンボルツリーは4半期ごとにデザインを変更する予定で、各校に実在するシンボルツリーをモデルに空間デザインへ反映しています。メタバース内にいながら「学校との接点」を感じ取れる構造です。
全体のデザインコンセプトは、先行して実施したARTORYの鳴門教育大学での事例を踏襲しつつ、児童生徒が違和感なく利用できるキャラクター設計・空間デザインとしました。操作性や画面構成にも配慮し、ボタン、ガイダンス、ポップアップ表示に統一感を持たせ、どこに行けばよいかが直感的に把握できる設計です。エラーメッセージも、児童生徒にとって理解しやすい表現を採用しています。
本システムの独自機能として実装したのが、NGワード設定と言い換えワード提案機能です。メタバース空間内で不適切な発言があった場合、事前に設定したNGワードに基づき自動的にブロックするだけでなく、管理画面から言い換えワードの候補を設定できます。「この言葉の代わりに、こう表現してみよう」と提案する機能により、発言を制限するだけでなく、より良いコミュニケーションへ誘導する役割を担います。
子どもたちが安心して使える空間を担保しつつ、コミュニケーションの質を高める仕組みであり、他のメタバースプラットフォームでは見られない独自機能として構築しました。
また、教職員が適切に見守れる環境を整備するため、管理者向け機能も実装しました。アカウントの発行・削除、入室制限、NGワード・言い換えワードの設定、アクセスログや滞在時間の記録、コンテンツ別の閲覧数確認などを一元管理できます。誰がいつ、どのエリアにどれくらい滞在していたかを把握できるため、支援方針を検討する際の判断材料として活用可能です。セッションリプレイによる行動データ分析も可能で、UI/UXの課題特定と継続的な改善に寄与する体制を整備しました。
運用開始前には、教職員向けの研修も実施しています。メタバースの操作方法だけでなく、どのように児童生徒を支援するか、どのような場面で声をかけるかといった運用面のノウハウも共有しました。システム導入で終わらず、現場で活用される状態まで整えることが、ARTORYが担う役割です。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| なぜブラウザ完結型か | アプリや特殊機器を不要にし、参加の心理的ハードルを最小化するため |
| なぜ3校園でデザインを共通化したか | 3校園で体験の質を揃えつつ、各校シンボルのNPC配置で固有性を担保するため |
| なぜNGワード+言い換え提案か | 発言制限だけでは健全な対話は育たず、代替表現の提示で言葉の学びに接続するため |
メタバース空間設計・構築(Webエントランス、小学校・中学校・特別支援学校エリア) / アバターシステム実装 / コミュニケーション機能(音声・チャット) / NGワード・言い換え提案機能実装 / 管理機能実装(アカウント管理、入室制限、アクセスログ、滞在時間記録、行動データ分析等) / 操作マニュアル(利用者向け・管理者向け) / 教職員向け研修 / 運用・保守支援
2026年3月、茨城大学教育学部附属学校園におけるメタバース空間が運用を開始しました。附属小学校、附属中学校、附属特別支援学校の児童生徒および教職員、最大50名程度が利用できる環境として稼働しています。
プロジェクトの推進にあたっては、附属特別支援学校の教職員が中心となり、現場の運用設計を主導しました。不登校の小中学生への支援に加え、特別支援教育の現場でメタバースを活用する方針が、導入プロセス全体の推進力となっています。
不登校や特別支援が必要な児童生徒への対応は、全国の教育機関における共通の課題領域です。「メタバースで何ができるのか」「どのように導入すればよいか」を検討する教育機関は少なくなく、茨城大学教育学部附属学校園の取り組みは、そうした検討の先行事例として機能しています。すでに他の教育機関からも照会が寄せられており、教育分野におけるメタバース活用の可能性を具体化する事例として位置づけられています。
本システムは、不登校に対する「解決策」ではありません。導入すれば全員が社会復帰できる性質のものでもない。あくまで教室に戻る前の「中間地点」として、段階的な一歩を支える手段として設計しています。いきなりゴールを目指すのではなく、まず一歩を踏み出せる場所を用意する——その役割を担うメタバース空間として運用が開始されました。
「不登校の児童生徒に、教室以外の居場所を用意したい」「特別支援が必要な子どもたちに、段階的な学びの機会を提供したい」——こうした課題に心当たりはありませんか。
ARTORYは、メタバースを活用した教育支援環境の企画・設計・開発から、管理機能の実装、教職員向け研修、運用支援までを一気通貫で実行します。学校法人との契約実績に基づく調達プロセスへの対応力と、教育現場で活用される状態まで整える運用設計力で、持続的に機能する支援環境を構築します。