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今回、導入インタビューを実施いたしました、「防災アニマル診断」の詳細を知りたい方は、
以下のリンクよりご覧いただけます。
URL:https://artory.co.jp/works/375
“防災に関心がない層”に届ける、2Dバーチャルマップ開発
ハザードマップの整備や周知が進む一方で、「防災に関心のない層へどう届けるか」は長年の課題です。
八千代エンジニヤリングでは、子どもに焦点を当てた防災教育に可能性を見出し、楽しみながら学べるコンテンツとして「防災アニマル診断」を展開してきました。今回、その取り組みをさらに広げるために、街を俯瞰して学べる“バーチャルマップ”という形でデジタル版を制作。
45分の授業内での学習設計や、イベント・地域での活用など、紙教材だけでは届きづらかった場面にも展開できる“防災啓発の新しいツール”として、運用が始まっています。本記事では、プロジェクトの背景から、デジタル化の狙い、現場での反応、今後の展望まで、加藤様・竹村様に伺った内容をご紹介します。
アートリー
今回の防災教育プロジェクトを始めた背景や、当時抱えていた課題を教えてください。
加藤様
私の認識では、ハザードマップの公表が義務化されて以降、防災意識の向上は広く進められてきました。ただ、現実としては防災意識の向上がなかなかうまくいかないという課題があります。
そこで、大人だけではなく子どもに焦点を絞って防災教育を行うことで、子どもが家庭に持ち帰って保護者に伝えたり、子どもたちが大きくなったときに、防災意識の高い社会へつながっていく。そうした考え方が背景にあり、(ここ10年ほどで)防災教育が広がってきていると捉えています。
アートリー
デジタル版(メタバース/バーチャルマップ)を作るにあたって、社内ではどのように説明し、承認を得て進めたのでしょうか?
竹村様
私が以前、名古屋にいた頃にIT系の展示会でアートリーさんとお会いしてお話を伺いました。防災って、どうしても「怖い」「被害が大きい」といった印象が先に立ちますよね。ただ、関心が薄い人に“怖い情報”だけを伝えても、なかなか関心は高まらないという課題感がありました。
その中で、楽しみながら学べるという切り口は、これまで届かなかった層にも届く可能性がある。そこが今回の取り組みのポイントで、社内にもその狙いを説明し、進めていく形になりました。
アートリー
いろいろな会社を比較検討された中で、アートリーにお声がけいただいた理由(決め手)は何でしたか?
竹村様
当時、メタバース関連もいくつかお話を聞きましたが、「本格的にやろうとすると結構かかる」という話も多かったです。その中で私たちがやりたかったのは、ゴリゴリの大型投資ではなく、街を俯瞰して見られる“バーチャルマップ”のような形で、気軽に取り組めるものでした。そこに魅力を感じて、お願いする流れになりました。
加藤様
もうひとつ大きかったのは、打ち合わせの段階から防災の背景や目的に関心を持って深掘りしてくださったことです。「なぜやるのか?」「何を届けたいのか?」という問いかけがあって、単に“作る”だけではなく、要件を一緒に整理しながら進められると感じたのが決め手でした。
アートリー
参加率や継続率など、数値的な部分で「効果が出ている」と実感されていることはありますか?
加藤様
利用者数自体は増えています。ただし、何もしないで自然に増えたというより、営業活動や広報など、積極的な働きかけの影響が大きいと認識しています。
なので今後も、登録者数を増やすには広報的な取り組みを継続しないといけないと思っています。
一方で“教育効果”の面では、学校教育の45分という限られた時間の中で、紙でやっていた学びをデジタルに変えたことで、生徒が自分の意識を把握して「マイタイムライン」を作るところまで到達できる事例が出てきました。さらに、作った内容を共有するところまで進められるのは、デジタルだからこそやりやすくなった点だと感じます。
アートリー
費用対効果については、どのように評価されていますか?
加藤様
そこが一番難しいところです。現状は無償で提供していて、これを将来、有償にできるかどうかは大きな課題です。
ただ、無償であっても、防災意識向上の効果は確実にあると思っています。本体の位置付けとしてはコンサルティングで、このツールを使いながら行政などへ提案していくこともできますし、単に“ツールを売る”だけの概念ではなく、社会をレジリエンス(災害に強い状態)へ近づけるための活用として価値があると考えています。費用対効果は、捉え方も含めて検討中、という状況ですね。
アートリー
ブランドイメージや社会的認知、メディアの反応などで変化はありましたか?
竹村様
デジタル版は、試行として8月上旬に一度実施して、その後8月末頃に公開しました。
さらに9月上旬の「防災推進国民大会(通称:ぼうさいこくたい)」の場でもアピールしています。そこから数ヶ月の間で、防災国体で出会った方々とイベントをご一緒したり、ホームページでの露出も増えてきている感覚があります。
また、デジタル版の前から「防災アニマル診断」自体をベースに広報していて、社員がFMに出てPRしたり、一部業界紙に掲載されたりといった反響もありました。
アートリー
実際に利用した子どもたちの反応で、印象的なエピソードはありますか?
竹村様
学校教育で使ったとき、最初にキャラクターを選べますよね。街を楽しく歩ける仕組みになっているので、子どもたちが最初から「楽しみ」にしてくれていた、というのが印象的でした。入り口が柔らかいので、子ども(生徒)も入りやすいですし、先生方からも「使いやすい」という反応がありました。
アートリー
紙教材とデジタルを比べて、学習姿勢や参加の仕方に変化はありましたか?
加藤様
どちらが正解というより、両方必要だと思っています。
紙は手を動かしながら会話しやすい一方で、一斉に同じペースで進めるのが難しい面があります。
デジタルは、同じ画面を見ながら授業のペースを揃えやすく、時間も短縮しやすい。終わったらすぐ共有できるのも良い点ですね。
また、小学校では1人1台タブレットがある環境も増えていて、URLでアクセスでき、場所も資機材も大きくは問わない。一方で大人向けになると、個人のスマホ利用がハードルになる場合もあるので、紙とWEBを一長一短で使い分けるのが大切だと考えています。
アートリー
学校だけでなく、ショッピングモールやイベントなどでも活用されていると伺いました。学校以外での活用には、どんな狙いがありますか?
加藤様
子どもだけでなく、大人も含めて地域のさまざまな方の防災意識を上げるには、学校以外の場でも活用していく必要があると思っています。実際、場所によって防災意識の傾向が違います。防災イベントや講習会は意識の高い方が集まりやすい一方、通常のイベントや店舗だと、防災意識が低い方も多い。その違いを踏まえて、場に応じた啓発の仕方を考えていくことも含めて、いろいろな場所で展開しています(ここは今後の課題でもあります)。
アートリー
イベントの狙いも教えてください。
竹村様
私たちが積極的に企画しているイベントは多くはないのですが、地域には「防災を伝えたい」というイベントや活動があり、主催者側が抱えている課題として、若い方や親子連れに防災を届ける難しさがあると感じています。関心のない方に難しい情報を伝えるのはハードルが高い。そこに対して、「動物キャラクター」などを軸にしたゲーム感覚の要素があることで、防災イベントではない場でも興味を持ってもらえる可能性があります。
現場では屋外イベントだと紙で実施することも多いですが、短時間では伝えきれないので、最後にデジタル版を案内して「家に帰ってからも見てください」とつなぐ流れが多いですね。改善点を見つけてもらう意味でも、デジタル版を継続活用してもらえると良いと考えています。
アートリー
今回の取り組みは、御社の防災教育全体において、どのような意味を持つと捉えていますか?
加藤様
弊社は国土交通省の河川事務所や自治体から、防災意識啓発の業務を受け、その一環としてイベント支援などを行っています。
その中で、今回のデジタル版は、啓発活動における強力なツールがひとつ増えたという印象です。
竹村様
このツールは“踏み台”になって、業務にとらわれず、いろいろな方向へ展開できる可能性があると思っています。学校での学びが家庭に持ち帰られ、家庭から地域へ、そして社会全体のレジリエンス向上へとつながっていく。そうした流れに少しずつ貢献できれば、私たちとしても新しい解のひとつになると考えています。
今回のインタビューを通じて、改めて強く感じたのは、防災意識の向上は「知識を伝えること」だけでは完結しない、という点でした。ハザードマップの整備や情報提供が進んでも、関心の差はどうしても生まれます。だからこそ八千代エンジニヤリングの加藤様・竹村様が語られていたように、恐怖や危機感だけで訴えるのではなく、“関心の入口”そのものを設計することが、これからの防災教育にとって大切なのだと実感しています。
とりわけ印象的だったのは、防災教育の対象を「子ども」に置くことの意味です。子どもたちが楽しみながら参加し、授業という限られた時間の中で自分の行動を整理し、さらに共有まで進められる。これは単にデジタル化したから便利になったという話ではなく、“自分の判断として防災を考える体験”をつくれているという点で、大きな価値があると感じました。竹村様が語られていた「怖い情報だけでは関心が高まらない」という課題意識が、今回の形にしっかり結びついていると感じます。
一方で、運用の現実も率直に共有いただきました。利用者数の増加は、黙っていて伸びるものではなく、広報や提案を重ねていく必要があること。無償提供から次のステップ(価値の届け方や事業としての成り立ち)をどう描くかが課題であること。さらに、大人向けではスマホ利用がハードルになる場面もあり、紙とWEBを場面に応じて使い分ける必要があること。こうした“理想と現場の間”にある論点を、前向きに整理されていた姿勢から、この取り組みが単発の施策ではなく、継続して育てていくプロジェクトであることが伝わってきました。
また、今後の展開として語られた「ローカル版」の構想も非常に示唆的でした。防災はどうしても一般論になりがちですが、本当に行動に結びつくのは“身近さ”が伴ったときです。自分の住む地域の地形や避難所、生活圏のリアルな条件と重なった瞬間に、防災は「知っていること」から「備えること」へと変わっていく。今回のデジタル版は、その切り替えを促すための土台として、大きな可能性を持っていると感じています。
アートリーとしても、今回の対話から得た学びを大切にしながら、単にコンテンツを制作するだけでなく、「どんな場面で、誰に、どう届かせたいのか」まで含めて伴走できる支援を磨いていきたいと考えています。学校、イベント、地域活動——それぞれの現場に合わせた設計と運用を重ねることで、防災が“特別な人のもの”ではなく、日常の延長線上にある文化として根づいていく。今回のプロジェクトが、その一歩になることを心から願っています。
今回、導入インタビューを実施いたしました、「防災アニマル診断」の詳細を知りたい方は、
以下のリンクよりご覧いただけます。
URL:https://artory.co.jp/works/375