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VEDUTA |
アパレル・ファッション
施策サマリー
コンセプト設計 / 複合イベント「伝燈LIVE」の企画構築 / 延暦寺への企画書制作・折衝 / モデルオーディション / 舞台・照明設計 / シネマカメラ撮影 / オリジナル楽曲制作 / ルックブック撮影 / プロモーション映像制作 / 自社開発プラットフォームによるライブ配信・ライブコマース
2021年12月、和服ベースのアパレルブランド「VEDUTA」のデザイナー・渡邉仁氏からアートリー代表・佐藤丈亮への相談から、ファッションショー「VEDUTA COLLECTION」のプロデュースが始まりました。
VEDUTAはストリートファッションとしての和服スタイルを提案するブランドです。ブランド名はイタリア語で「景色」を意味し、世界中の人々が自然に着物を身に纏う景色を創るというビジョンを掲げています。
最初の検討事項は、開催場所の選定でした。都内のイベントホールでは「着物の再解釈」という世界観が伝わらず、伝統的な場所であればブランドと適合するとも限りません。共通の知人を介して比叡山延暦寺との接点が生まれたものの、1200年の歴史を持つ天台宗の総本山でファッションショーを開催するには、延暦寺側の許諾を得られる論拠が必要でした。
さらに、世界遺産という舞台に見合うショーの品質と、ショーを成功させるための認知形成も同時に組み立てる必要があります。延暦寺との接続、ショー品質、認知形成の3点を、単一のプロジェクトの中で並行して解く。これが本案件の構造でした。
提案書制作にあたりARTORYが最初に取り組んだのは、「なぜここで開催するのか」という意義の言語化です。歴史ある場所という理由だけでは、延暦寺側の許諾を得る根拠として不足します。両者を結ぶ文化的な軸を組み立てる必要がありました。
調査と対話を重ねるなかで着目したのが、天台宗の開祖・最澄の言葉「一隅を照らす」と、根本中堂で1200年灯り続ける「不滅の法灯」です。前者は「一人ひとりが自分の場所で役割を果たすことが、社会全体を形づくる」という思想、後者は「伝統は継承によって保たれる」という教義の象徴となります。
この二つは、VEDUTAの事業構想と構造一致を持ちます。着物を現代的に再解釈して次世代に継承するというブランドの姿勢は、法灯の継承と同じ構造です。この一致を、延暦寺への提案の論拠としました。
一方で、ファッションショー単独では「なぜ延暦寺で開催するか」の答えとして弱さが残ります。そこで、ショーを中核に据えた複合イベント「伝燈LIVE」を設計し、日本文化の継承と発信という文脈をイベント全体で構築しました。「伝燈」は師から弟子へ教えが継承される意の仏教用語で、ファッションショーに加え伝統工芸品のライブコマース、延暦寺境内のライブツアー、平和の鐘LIVEを複合的に配置した構成です。VEDUTAのショーは、この文化継承の文脈の中核として位置づけられました。
コンセプトが定まると、キャスティングの方針も定まります。ARTORYは「VEDUTAの『景色』は、一人ひとりが見たい景色を集めた集合体である」とコンセプトを発展させ、キャスティング設計の根拠としました。世界中に散らばる一人ひとりの「景色を見たい」という意志を、応募という形で可視化する設計です。
ARTORYが設計したのは、全国からのモデルオーディションです。17歳から50歳まで、年齢・国籍・ジェンダーを問わず、プロ・アマを問わず応募を募集。380名からの応募があり、最終的に37名のモデルがキャスティングされました。ウクライナから名古屋に避難していた少女2名を、「一隅を照らす」の社会的展開としてアンバサダーモデルに起用。紛争地域の出身者が世界遺産で着物を纏う構成は、コンセプトを社会的な文脈へと広げる配置となりました。
オーディションの過程は、そのまま認知形成の設計として機能しました。最終選考をWEB投票とし、応募者自身がSNSで投票を呼びかける仕組みとしたことで、広告費約30万円に対して21,755票の投票、9,163名の新規ユーザー登録を獲得。ユーザー獲得単価(CPA)は約30円で、通常のデジタルマーケティングの相場から1〜2桁低い水準です。コンセプトを体現するキャスティング自体が、ショーへの認知と期待値を形成する装置となりました。
延暦寺という会場の格とVEDUTAのブランド価値に応えるため、制作品質は海外のハイブランドが歴史的建造物で展開するショーの水準を基準に設定しました。
舞台構成:阿弥陀堂前に特設ステージを設営し、阿弥陀堂の廻廊をランウェイとして活用。モデルは廻廊を歩いて特設ステージに登場する構成としました。歴史的建造物そのものがランウェイとして機能する、会場の格を活かした演出です。照明は会場の雰囲気を活かした色彩設計とし、モデルの動線上には白い照明を配置して着物のディテールが映える構成としました。
撮影体制:Canon EOS C70を4台、C300を1台の計5台によるシネマカメラ体制。世界のファッションショー映像を事前に研究し、アングル・タイミング・動きを入念に設計したうえで、各カメラマンに具体的な指示を落とし込みました。
楽曲制作:作編曲家・菅原一樹氏(anre*f)が担当。楽曲制作に先立って延暦寺を訪問し、鐘の音・読経・風・鳥の声をフィールドレコーディング。これらをサンプリングに用い、電子音とビートの上にも常に鐘の音が鳴り続ける構造の楽曲を制作しました。変化の中に変わらないものを配置する構造は、VEDUTAのブランドコンセプトそのものです。
ルックブック撮影:通常非公開の大書院(国登録有形文化財)で実施。明治時代の純日本式建築の空間で、VEDUTAのコレクションを撮影しました。
配信プラットフォーム:ARTORYが自社開発したライブ配信プラットフォームを使用しました。このプラットフォームにはライブコマース機能が統合されており、視聴者はショー配信を見ながらVEDUTAのコレクションをその場で購入できる設計です。従来のファッションショーは「発表の場」で完結しますが、発表と購買動線を一体化することで、ショー自体をブランドの収益装置として機能させる構成としました。
これらの素材は、ショー当日だけでなく配信終了後もブランドアセットとして運用できる設計です。プロモーション映像とメイキング映像7本をプロジェクト期間中に段階的に公開することで、本番までの認知形成にも接続しました。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| なぜ「一隅を照らす」「不滅の法灯」をコンセプトにしたか | VEDUTAの「伝統の再解釈」というビジョンと、1200年続く聖地の精神を哲学的に接続できたため |
| なぜモデルオーディションを行ったか | ショー前から認知と期待を高め、イベントが盛り上がるきっかけを作るため |
| なぜシネマカメラやオリジナル楽曲を使ったか | エンタメではなくオーセンティックな表現で、VEDUTAと延暦寺双方のブランド価値を高めるため |
コンセプト設計 / 複合イベントの企画構築 / 比叡山延暦寺への提案書制作・折衝 / モデルオーディション設計・運営 / 舞台設営・照明設計 / シネマカメラ撮影 / オリジナル楽曲制作(菅原一樹氏、延暦寺でのフィールドレコーディング) / ルックブック撮影(延暦寺大書院) / キービジュアル制作 / プロモーション映像・メイキング映像7本制作 / ライブ配信
2022年10月10日、比叡山延暦寺で「伝燈LIVE」が開催され、VEDUTA COLLECTIONが発表されました。オンライン視聴者数は25,778人、PVは193,831、51カ国からの視聴、総再生数は20万回超を記録しています。
新興アパレルブランドの単独コレクション発表としては異例の規模で、事前のオーディションで形成した認知と期待値が、当日の視聴に接続した結果です。同時に、比叡山延暦寺1200年の歴史上初のオンラインイベント開催という位置づけを得ています。
VEDUTAにとって、このショーはブランドの転換点となりました。世界遺産を舞台に発信したことで、「伝統を再解釈するブランド」というポジショニングが、1200年の歴史を持つ聖地との関係のなかで根拠づけられた形となります。延暦寺側にとっても、VEDUTAの国際的な発信力とデジタル配信チャネルを通じて、寺の価値を新たな層に届ける機会となりました。
シネマカメラで撮影された映像、菅原氏のオリジナル楽曲、大書院で撮影したルックブック。これらはショー終了後もVEDUTAのブランドアセットとして運用可能な資産となっており、単発のイベントを超えた継続的な価値を生んでいます。