目次
1.JOSUKEが蜉蝣に込める思い
2.撮影当日までにストーリー構成を入念に固める
3.ロケ地を下見することで出来上がる、より明確な撮影イメージ
4.理想の映像を撮影する機材
5.シーンごとの抑揚を衣装で表現
6.回想シーンで出演する女優の抜擢
7.撮影当日を振り返って
2019年8月22日(木)にアートリーエンターテインメント所属アーティスト、JOSUKE(佐藤丈亮/株式会社アートリー代表取締役)の4th Single『蜉蝣』(カゲロウ)を配信リリースいたしました。本作品は数々のJ-POP楽曲のアレンジャーを務めるYocke(ヨッケ)さんのもと、情緒あふれるトラックに仕上がっております。前作の『花化粧』同様、『蜉蝣』の世界観を映像で表現するため、アートリーでミュージックビデオ(以下MV)を制作いたしました。本レポートではMV制作における一連のクリエイティブストーリーを振り返ってまいります。
1.JOSUKEが蜉蝣に込める思い
2.撮影当日までにストーリー構成を入念に固める
3.ロケ地を下見することで出来上がる、より明確な撮影イメージ
4.理想の映像を撮影する機材
5.シーンごとの抑揚を衣装で表現
6.回想シーンで出演する女優の抜擢
7.撮影当日を振り返って
『蜉蝣』は、夏の終わりを描いた楽曲です。成虫寿命が数時間しかない昆虫「カゲロウ」の儚い一生を、ひと夏の思い出になぞらえています。
誕生は今から遡ること約10年。当時20歳前後だったJOSUKEの実体験をアイデアに歌詞が綴られ、アートリーの佐藤、古市、蒲生を中心に活動していたバンド「SINSEMILLA」の楽曲として発表されました。ライブ会場では、「夏の終わりが近づくと――」のサビフレーズで、ファンが一斉に手を振るフリが一体感を生み、夏のアンコール曲としてファンに愛されていました。
そんな思い入れのある『蜉蝣』を、バンドサウンドからエレクトロサウンドにリメイクし、JOSUKEの4th Singleとして再発表する運びとなりました。
10年が経って大人になった今、当時純粋な思いで描かれた作品のストーリーを、いかにアートリーのクリエイティブで表現できるか。その挑戦にわくわくしながら『蜉蝣』のMV制作はスタートしました。
MV制作は撮影当日までにイメージを明確にするため、レファレンス選びや絵コンテ作りに時間を費やします。当日撮り忘れがないよう、全体的なストーリーを前もってしっかりと構成し、楽曲に合わせて撮影シーンを決定する必要があります。
検討を重ねた結果、描かれる映像は、“浜辺で2つの物語が交錯しながら展開していく”ストーリーで決まりました。10代の時に彼女と訪れた浜辺デートの回想シーンを一つに、そして、10年後に同じ場所を訪れ思い出を振り返りながら歌うシーンをもう一方に。
シーンは歌詞の内容に基づいて構成していきますが、映像を見る人の心を惹きつけ、感情移入される作品にするためには、歌詞では語られないストーリーの背景や情景の美しさも描いていくことが必要となります。
ストーリーが決まったら、次にロケ地を検討しました。
ロケ地は、SINSEMILLAメンバーで毎年夏に遊びに来ており、実際に楽曲の舞台にもなった福井県の水晶浜。JOSUKEのMV作品で、アートリーが主となって行う初めてのロケ撮影だったこともあり、駐車場や周辺施設の確認などもするため、現地まで足を運んで入念に下見することにしました。
実際に現場を訪れ浜辺を歩いたことで、さまざまなアイディアが湧きあがり、理想とする映像を表現できるポテンシャルを感じました。また、カメラテストをしようと持参した機材も、“波”や“空”などといった景色の素材撮影に貢献しました。
撮影機材は、前作のMV撮影でも使用した「LUMIX DC-GH5S」をメインカメラに採用。パナソニックが2018年1月に発売したミラーレスの一眼レフカメラで、動画撮影がしたいユーザー向けにあえてセンサーの画素数を落とすことで高感度撮影時のノイズ耐性を上げるなどの改良が施された、動画に特化したデジタルカメラです。4Kの解像度により、過去のカメラでは捉えきれなかった被写体の質感レベルまで映し出すことが可能になり、前作の「花化粧」同様、美しい映像が担保されていました。
また、映像撮影では外せない、手ブレ対策として採用したスタビライザーは「DJI RONIN-S」。こちらも「LUMIX DC-GH5S」と合わせて前作から取り入れた機材です。
ロケ地である浜辺が大きなヒントとなり、昼と夕方で表情が変わる海に合わせて衣装を変えるアイディアが浮かびました。凛としたJOSUKEと、激情に駆られるJOSUKEを表現したら抑揚が生まれて、面白い映像が撮れるのではないかと。そして、本作品の題名である「蜉蝣」という言葉のイメージから浮かび上がってきたのは和のテイスト。羽織が海風になびくことで映像に動きも出て、より存在感を大きく映し出すイメージが自然と湧いてきました。
方向性が決まったところで、辿り着いたのは、“服になるストール”というユニークなアイテムを展開する「ミハイルギニスアオヤマ」と、ストリート着物・浴衣ブランドを展開する「VEDUTA」でした。
ミハイルギニスは、日本文化である着物と古代ギリシャの布を巻き付けて服にしていた文化を織り交ぜた、オリジナリティの高いデザインを提供されています。海の情景に、南国の情熱的なイメージではなく、神秘的で凛とした地中海のようなイメージがハマったために採用しました。
そして、VEDUTAは以前からJOSUKEの友人でもあった渡邊仁さんが手がける、ストリートファッションと着物を融合した“STREET KIMONO”ブランドです。前々から「コラボしたい」と、お互い話し合っていた経緯もあり、「最後のサビの映像で強烈なインパクトをつけたい」と相談したところ、サンプルが仕上がってきたばかりの新作の浴衣を衣装提供してくださることとなり、念願の初コラボを実現することができました。
最後にもう一つ、検討する必要があったのが、回想シーンに出演していただく彼女役の女優でした。20歳前後という設定なので少しあどけなさを残した清楚な女性をイメージしました。海が似合う、爽やかな笑顔のモデルさんを探した末、セントラルジャパン所属で、雑誌「Voce」専属モデルもされている「松原菜摘」さんに出演したいただくことになりました。作成したレファレンスや絵コンテは彼女にも事前にお渡しして、イメージを共有させていただいた上で撮影当日を迎えました。
2ヶ月に渡る入念な下準備を終え迎えた撮影当日。
JOSUKEをはじめ、カメラマン3名、アシスタントディレクター2名、モデルさんとメイクさん1名ずつの総勢8名が現場に集合しました。梅雨時の撮影でしたが、幸運にも天気にも恵まれました。あとはイメージ通りの映像をいかにスムーズに撮影できるか。最も重要視していたのが夕日のシーン。下見の際に絶好のロケーションを見つけており、楽曲のクライマックスで情緒的な印象を作るためにも、絶対に欠かせないシーンでした。日没時間は19時20分。目的の時間から逆算して1日の撮影スケジュールを設計し、当日まで入念に構成を練ってきたこともあって、ほぼ全てイメージ通りの映像を収めることができました。1日を通して自然とスタッフ同士が連携し、手際良く撮影が進みんだことで、クリエイター冥利に尽きる1日となることができました。
完成した作品はYouTube上の「JOSUKEofficial」チャンネルでご覧いただけます。前作「花化粧」同様、ARTORYがプロデュースし、カット割りの編集からカラーコレクションまでJOSUKEが自ら行なった、渾身の映像をぜひご覧ください。