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- 【日本の物価高騰】物価高騰する社会で企業が生き残るには?
2022.06.23 放送分
【日本の物価高騰】物価高騰する社会で企業が生き残るには?
第86回アートリーアカデミア
THEME
【日本の物価高騰】物価高騰する社会で企業が生き残るには?
2022年4月、帝国データバンクが発表した価格改定動向調査では、2022年に食品主要105社が約6000品目の値上げをする計画があることが分かりました。世界的な食料品相場の上昇に加え、原油価格の高騰に伴う物流費の値上がり、為替でも円安傾向が続くなど全方位でコスト増加が続いており、今後も各種品目で値上がりが続く可能性が高いとみられています。物価が高騰する社会で企業が生き残るには?アートリーアカデミアでソリューションを見出します。
TOPICS
ニュースの話題
- 佐藤
- 始まりました。アートリーアカデミア。
- 井戸
- 本日のテーマはこちらです。「日本の物価高騰。食品主要105社、6000品目超が今年(2022年)値上げ。価格は平均で1割アップ。今年(2022年)4月、帝国データバンクが発表した『価格改定動向調査』において、『2022年中に食品業界の主要105社が約6000品目の値上げをする計画がある』とのことが分かりました。『世界的な食料品相場の上昇』に加え、『原油価格の高騰に伴う物流費の値上がり』や『為替面で円安傾向が続いている』ことなど、全方位的な『コストの増加』が続いており、今後も『各種品目で値上がりが続く』可能性が高いとみられています。」
- 佐藤
- 「日本の物価高騰」ですけれども、まずはニュースについて(の解説をいただきましょう)。
- 蒲生
- 今年(2022年)になって、「各商品の価格が高騰して」いますが、これには、「トリプルパンチ」とも言える原因がありまして。1つ目は「ロシア・ウクライナ情勢の影響」です。それから2つ目が「円安」で、3つ目が「コンテナ不足」……。要は「海運でコンテナを輸入したものの、それを捌く人間が足りない」らしいです。要は「未だにコロナ禍は明けてはいない」けれど、(海外では規制緩和が進んだことで、)「経済活動も再び盛んになりつつ」あって。そうは言っても、(コロナ禍で減らした分の)「人員配置がまだ追い付いていない」側面も多々あるようで……。
- 佐藤
- つまりは「間に合ってない」わけか。
- 蒲生
- こうした事情が背景になっています。
- 佐藤
- 実際、うち(株式会社アートリー)は「飲食店(大須アートリーキッチン)もやって」いますけれど。コロナ禍による「緊急事態宣言」や「(飲食店への)時短営業要請」が明けた途端、「サントリーのウイスキーが入荷しづらくなった」みたいなことがあったから。だから、「そういうこと」だよね? 要は「一気に経済が動き出す」ことで、「注文も一気にかかるようになる」から。その結果、「いろいろなところの『物価』と言うか『サプライチェーン』が間に合っていない」わけか。ところで(原)先生、(原則的には)「円安になれば物価はインフレするもの」ですよね?
- 原
- そうです。さらに言えば、「日本はそういう話(円安による物価上昇)になりやすい」ですから。
- 佐藤
- 「為替」というものは、例えるのであれば、「シーソー」だから。要は「分かりやすいイメージ」を説明すると、「円高」の場合、「デフレになる」ことで、 「モノの価値が下がって安く買える」んだ。だけど「円安」の場合、「モノの価値は相対的に高くなる」から。だから、「『物価高騰が原因』なのか『円安が原因なのか』、どちらが先なのか?」となってくるけれど……。だから、その辺は「金融のプロフェッショナル」に訊いていこうかと……。
- 原
- まずは、(佐藤社長の)「おっしゃる通り」です。今回の「ロシアによるウクライナへの攻撃」の結果、「少なからぬモノが入りづらくなった」わけでして。実際、「入りづらくなったモノ」の例を挙げると、「ロシア」の場合は、「小麦」や「(レアメタル)のパラジウム」。それから、世界の産出量で3位を占めている「原油」辺りが「大きな影響を受けて」います。ちなみに「ウクライナからは農産物などが入らなくなった」(※ウクライナは古くから「スラブの穀倉地帯」と呼ばれ、国旗の下半分の黄色は「小麦畑」を表しているとされる)ことが、「モノの値段が高くなっている原因」です。加えて、(終焉の兆しの見えない)「コロナ禍の影響で、モノが入って来ない」状況も続いていましたから。とは言え、遠因には、「原油が高騰していること」もありますけれど……。だから言わずもがな、「パンチ」にはなっているでしょう。おまけに「コロナ禍をきっかけに」起こった「コンテナ不足」……。そもそもは「アメリカで起こった『ウッドショック』」に端を発しているのですけれども……。さらに、(新型コロナウイルスの世界的なパンデミックを受けて、)「中国がコンテナまで隔離してしまう」ような防疫対策を実施して。そこへ追い討ちをかけるように「上海のロックダウン」まであって。だから、「全てが重なっている状況」なんですよ。……もちろん、(物価高騰の原因には、)「為替動向の結果」もあることは間違いないのですけれど。要はアメリカ中央銀行が「FRB(Federal Reserve Board:連邦準備制度審査会)の『FOMC(Federal Open Market Committee:連邦公開市場委員会)』という会議を開いて、『急激なインフレが進んでいるので、金利を上げて、物価上昇スピードを抑えよう」としているわけです。ちなみに日本では、「総裁の黒田さん(第31代日本銀行総裁の黒田東彦氏のこと)」が、「金利は上げないよ!」と言っている状況です。だから、こうしたところが「現状の物価上昇に繋がっている大きな原因」だろうと思います。
- 佐藤
- それはそうと、「物価が上昇しているのは日本だけ」なの?
- 蒲生
- 日本は「今年(2022年)になって上がって」います。だから、「ロシア・ウクライナ情勢による世界的な影響」は「受けている」でしょうね。
- 佐藤
- ということは、(ロシアのウクライナ侵攻の余波で)「(物価が)高騰している面はある」のか。
- 原
- 加えて、海外では元々「どちらかと言えば物価が上昇している」という基調はありました
- 佐藤
- そもそもが「インフレ気味」だったのか……。
- 原
- とは言え、「インフレの基調がありました」くらいの話です。要は「モノの価値が上がる」よりも、「お金の『価値』と言いますか、『需要』が高くなっていた」わけで……。
TOPICS
フリップ解説
- 佐藤
- そうは言っても、「インフレやデフレは『様々な要因で起こる』」わけですよね? ……「フリップがある」とのことですので、先に見てみましょうか。
- 井戸
- 「企業の物価指数推移」という参考資料です。2020年4月から右肩上がりでして、今年(2022年)4月には「過去最大である10%の増加を記録した」という参考資料になります。
- 佐藤
- (物価指数推移が過去最大の10%増というのは、)「この2年間で」ということ?
- 井戸
- はい。
- 佐藤
- 「2年で10%も上がった」のか……。……ところで、この(企業の物価指数推移の)集計は「国内企業」だけ? それとも「海外まで含めて」いるの?
- 蒲生
- 「国内と海外の全ての取引を合わせた上で、企業間取引商品の物価を指数化したもの」が、「企業の物価指数」になります。
- 佐藤
- 要するに「どのみち10%伸びました」というわけか。
- 蒲生
- ちなみに、今回(のニュースで)「過去最大」と言われているのは「速さ」になります。
- 佐藤
- つまりは「2年間での物価指数の推移速度が過去最速」だったわけか。先ほども言ったように、「インフレやデフレは様々なものに影響されて起こる」わけですけれど。基本的には、「需要と供給のバランスで起こる」わけだよね? 例えば、「需要が増えれば、モノの価値は上がっていく」から。だから、「モノが売れている状況」であれば、当然のことかもしれないけれど、「賃金も上がって」いって、結果として「消費が増える」みたいなバランスで成り立っているけれど。だけど、「今起こっていること」は「コストだけが上がっている話」だから、「コストが上がった分、企業は利益を確保するために、物価を上げる」よね? だから、「(物価が)上昇している」としても、実際には「利益が増えていない」わけだから。その結果、「モノが売れていた」としても「給料は増えていない」ということは、「消費が増えていないのに物価だけが上がっている」わけだから。「実質、給与が下がっている」……。つまり、「使えるお金が減る」わけだから、「負のインフレ」ですね?
- 原
- おそらく「(負の)インフレ」ではなく、「スタグフレーション」と呼ぶべきでしょうね。「景気動向から考える」のであれば、今の状況は、「景気が悪くなる前触れとして物価が上昇傾向にある」とも言えるでしょうから。
- 原
- ちなみに「日本で今後懸念されていること」としては、「コロナ融資」というものがありましたよね? あれは「3年の据置期間」……。要は「利息が0円の状況を3年間」……。最大で「5年」まで延長できますが……。だけど、「既に使い切ってしまっている会社」も「少なからずある」んですよ。
- 佐藤
- それは、「この(コロナ)融資を(既に使い切ってしまった)」ということ?
- 原
- 実際、「それ(コロナ融資を使い切ってしまったこと)に対する相談が多い」ので。そうは言っても、事実、「据置期間が『3年』」の場合、「来年(2023年)の4月以降に返済が開始される」わけでして。そうなると、それ(コロナ融資の返済開始)をきっかけに、「スタグフレーションで景気が悪くなる可能性もあり得る」かと……。
- 佐藤
- その場合、「倒産する企業も出てくるかもしれない」わけですね?
- 原
- あると思います。今、(仕事柄)いろいろな金融機関さんとお付き合いがありますけれど。「金融機関は『企業にランク付け』して」いますよね。 その中では「A〜D」が「正常先」と呼ばれているのですが、(ギリギリの「正常先」である)「Dのところ」が「どんどん増えて」います。要は(金融機関では)「『貸し倒れ懸念先』と呼ばれる層がどんどん膨れている」わけです。
- 佐藤
- ところで、それ(金融機関の信用格付け)は「何で見ている」の? 「市場動向」? それとも「業績」?
- 原
- (金融機関の信用格付けは、)「実際の金融機関が貸した取引先の業績のうち、実際に払えなくなる可能性があるかもしれないけれど」みたいな……。
- 佐藤
- つまりは、「実際に悪くなっている」のか。
- 原
- そういうことです。
- 佐藤
- 結局は(スタグフレーションも)「物価の上昇と関連している」わけか。
- 原
- その通りです。特に今年の2月以降の(ロシアの)ウクライナ侵攻で、そこ(スタグフレーション)はかなり顕著になってきていて。とは言え、もう1つ悪い話がありまして。というのも原油などの(価格)上昇は、「約半年前の動向が反映される」んですよ。そうなると、(ロシアによる)ウクライナ侵攻が起きたのが、「2月」のことですから、「半年後」と言うと、おおよそ「8月〜9月」……。
- 佐藤
- ということは「さらなる追撃がもう一発来る」かもしれないわけか。
- 原
- 今、「円安」と言っても「130円台」ですよね? だけど、「予測」とは言え、「155円ぐらいまでいく可能性がある」ので……。(※実際に、2022年10月20日には「1ドルが150円台」になって、「約32年振りの円安」と言われた。)
- 佐藤
- 「円安がさらに進む」のか……。
- 原
- 「(円安がさらに)進む可能性がある」わけです。
TOPICS
テーマ討論
- 佐藤
- 話を本筋に戻しましょうか。本日の課題を見てみましょう。
- 井戸
- 「日本の物価高騰 課題:物価が高騰する市場で企業が勝ち抜くには?」
- 佐藤
- あっさり問いが挙がってきたけれど、「本当に難しい問題」ですよね。
- 原
- そうですね。
- 久田
- 今回の問いは、「物価が高騰していくことが前提」のようですけれど、「もはや戻らない」の?
- 原
- 「戻らない」と思います。なぜなら……。
- 井戸
- それなら、「この先どれぐらい戻らない」の?
- 原
- おそらく「かなり先まで戻らない」と思います。なぜなら、日本は先ほどの「賃金の話」でもありましたけど 、長期間「モノの値段が下落した」わけで。要は「デフレで物価が下がった挙げ句、給料も上がらない状況」が「何十年近く続いている」わけですよ。一方、「海外は成長し続けている」のに、「日本だけが成長していない」わけですよ。そうなると、日本政府は「今が物価や人件費を上げるタイミングだ!」と考えるので、「下げようとは思わない」でしょう。しかも今は「円安」なので、「輸入には不利」だけれど、「輸出する場合には有利」なわけです。だから、本来であれば、「一概に良いも悪いもない」わけです。……そうは言っても、「製造業が全盛期だった頃の日本」であれば、「円安のほうが良い」わけですよ。だから、つい最近も……。少し前も黒田さんが「円安を良しとする」みたいな発言があったので。だからこの先「どうなるか?」と問われると、おそらく「物価上昇高はそう簡単には解消しない」と言いますか……。
- 佐藤
- しかもこれ、何が問題になっているのかと言えば、この数十年の間に製造拠点を海外に作っていたわけだから。要は「海外で作らせて円で取引する」ことで、「自分のところの仕入れを行うだけでも『コストが高い状況』になってしまっている」わけだよ。要するに、「売る時は問題ない」んだけど、「自分たちのせいで製造段階のコストが高くなっている」わけよ。だけど仮に「国内製造でやって」いれば、「円安で買える」わけだよね? 結局、今までは「円高だった」から、「物価の安い国で作らせれば良かった」んだけど、蓋を開けてみれば、「完全にシフトするタイミングをミスっていた」わけだよ。だから、おそらく今は「国内需要に向けた製造」が多くなりつつあるだろうから……。……そう言えば、渡邉さんも「『国内』にこだわってアパレルを作って」いましたよね?
- 渡邉
- はい。全然響いていないです。
- 佐藤
- 「響いていない」とは?
- 渡邉
- 実際、この前、(取引先の)工場の奥さんから言われたことが、「コロナ流行に伴う上海のロックダウンや物価の高騰を受けて、物価やコストを安く抑えて作れるよう、中国やベトナムなどに浴衣の製造を依頼していたところが日本に戻ってきた挙句、「今さらかもしれないがうちの製品も作ってくれ」みたいに依頼してくる」そうで。だけど、そこが「すごく義理堅い考え方」をしてくれていて。どうやら、「『渡邉さんたちは、コロナの間も変わらず注文を続けてくれたから先にやれ』と社長がおっしゃった」らしくて。それで、「うちはそういう(お見限りをしなかった取引相手を優先する)スタンスだし、 困った途端、今さらのように「安く作ってくれそうなところに戻ってきた」ところは、「後回しにして構わない」みたいな感じで。だから、むしろ「自分は守られている」と言いますか……。おそらく、「焼き肉の仕入れ」ではありませんけれど、「取引年数の長い業者に良い肉は優先的に分配される」わけですよね? 要は「一見さん的にあとからフラッと入ってきた業者」は「信頼関係の構築から始めなければならない」わけだから。詰まるところ、「景気に左右されて常に安いところを探してふらふらする」よりも「結び付きを重視していくべき」だろうと思います。
- 佐藤
- それはむしろ「本筋の話」だね。「企業が勝ち抜くには?」という意味では、本当に「信頼があるか否かの話」だよね。
- 渡邉
- だから、「(円安による打撃というもの自体、)全く持って蚊帳の外」と言うか……。
- 井戸
- だけど、ある意味、「幸せな蚊帳の外」ですね。
- 佐藤
- それは渡邉さんが「義理堅くやってきたから」であって……。
- 井戸
- あとは(工場の社長さんの)「人柄」でしょうね。
- 佐藤
- そもそも「普通であればみんな困っている」わけでしょう?
- 渡邉
- 実際、「すごく困っている」みたいです。大きいところほど「スケールメリットで考える」わけですから。日本で作ろうが海外で作ろうが、多くの製品を「リーズナブルに卸す」ために、「10円でも、20円でも安いところ」を探していくわけです。「安けりゃ良い」。確かに、それも「1つの考え方」でしょうけど。だけど、僕の場合は「趣旨が違う」ので。「日本の小さい工房や地方に根差した企業に仕事を作ることも含めて自分の仕事」であると思っているので。そもそもの趣旨は違いましたが、そんな感じです。
- 佐藤
- でも 、友人としては「聞けて良かった」。
- 渡邉
- むしろ僕もそういう意味で捉えてもらって、「感動しました」ね。ぶっちゃけた話をしてしまうと、僕のオーダーは「面倒臭いだけ」なので、「大手はなかなか取り合ってくれない」んですよ。ちなみに、何が「面倒臭い」のかと言うと、「着物の襟にファスナーを付けて欲しい」みたいな……。
- 佐藤
- 「工程が」ね。
- 渡邉
- 「裾の長さを1センチ増やして欲しい」のように、面倒臭い注文を「1着〜3着」みたいな超少量で発注するので。だから、実際には「何十〜何百着単位の注文」のほうが「ビジネスにはなる」わけですけれど。でも、(その)工房的は、「そんなもんは、もう後回しで構わない」なんて言ってくださるのが、「『(うちとの取引を)優先してくれているんだな』みたいで嬉しかった」ですね。それに、向こう(取引先の工場)からしても、そういうところ(常に安いところを探しているコスパ追求ノマド)は、「景気が良くなった途端、余所に行く」と言うか「浮気する」みたいなところがあるから。言ってしまえば、「あまり信用がない」わけですよ。であれば、「『コツコツ築き上げてきた関係を大切にする』という素晴らしい考えの工房さんと組んでいる」からこそ……。
- 佐藤
- 渡邉さんは「義理堅かったから」と言うか、「縁のあるところがたまたまそういう体制だった」と言うべきか……。
- 渡邉
- そうですね。
- 佐藤
- だけど、「国内でビジネスとして展開しているところ」は、今、「物価高騰による値上げの影響をモロに喰らっている」だろうし。「海外から仕入れている分を内需で賄い始める」となると、当然、アパレルで言うところの「一次生産」や「 二次生産」だけでなく、 最終的に「消費者の手に渡る時までさらに物価が上がっていく」みたいにはなりやすいでしょうけれど……。
- 原
- 「このままコストが上がっていくこと」は、「大前提」だと思います。
- 佐藤
- だよね?そうした(円安による逆風が吹き荒ぶ)中で、「企業はどうやって勝ち抜いていけば良いのか?」ですが……。
- 原
- 私の考えを……。
- 佐藤
- どうぞ。
- 原
- 事実を述べると、「今上がってないのは賃金だけ」なんですよ。要は「物価が上がっているのに、賃金は上がっていない」わけだから……。
- 佐藤
- だけどそれ(賃金据え置きのまま物価が上昇していること)は、「賃金が上がれ」ば、「問題は解決される」わけだよね?
- 原
- 「賃金を上げる」にしても。先ほどのお話ではありませんが、「今までの日本経済」……、特に製造業 では、「現調」と言って、「現地調達が前提」だったんです。だから、(渡邉さんの取引先の工場の奥さんの)「今さら戻ってきて……」と言うのも、「おっしゃるとおり」なんです。実際、「製造業の会社」は何社かうちのお客さんにもいますけれど、「海外に移した製造拠点を国内に戻す」という動きには「なってきて」います。だけど、「作るもの自体の値段が高くなっている」ので、「今までと同じ金額で」と言われても、「やれない」わけですよ。おまけに製造業の場合、よくある話なんですが、「値上げ交渉するにしても上の許可が必要です」みたいなオチが来る時があって。「どんだけ待つの? その間、うちは作らないよ?」みたいなことになるんです。だから、 「日本企業が今すべきこと」は、モノの値段が高くなっていることに対して、「今の金額で頑張ってます」ではなくて、「『これだけ値上がりしているので、賃金も上げてください』とみんなが声を大にして言わなければならない」んです。それで、その状況(国民が総じて給料アップを望んでいること)を踏まえた上で、「賃金を上げる」ことが「今、最も必要とされていること」だろうと思います。
- 佐藤
- そうは言っても、「キャッシュ(現金)のない会社」はどうするの?
- 原
- その場合は、「融資を受ける」べきでしょうね。
- 佐藤
- 「融資を受けてまでも賃金を上げるべき」なのか……。
- 原
- そのほうが良いかと思います。だけど代わりに、既に言ったように「売り上げの交渉は全ての会社とすること」が前提になります。 要は「売り上げを最大限上げる方向に持っていく」ために……。
- 佐藤
- 単純に「賃金だけを上げてもいけないから、売価を上げる」と、その拍子に「一瞬」とは言え、「売り上げが落ちる可能性がある」からだよね? だけど、「賃金を上げる」には……。
- 原
- だから、「融資で繋ぎ」ながら、この先「景気が悪くなったとしたらどんな会社であるべきか?」と言われると、「手元にお金がたくさんある会社」であるべきなんです。「人間は油断する生き物」と言いますか、バブル(経済)が崩壊した時も、リーマンショックの時もそうでしたけど、「景気が若干なりとも上向きな時に限って、この手のこと(突然の経済危機)が起きる」んです。言ってしまえば、「大体15年周期で景気が悪くなっている」わけですが。だけど、好景気の間に、人間には「慣れ」と言うか「油断」が生じるものだから。好景気の状態が長く続くと、「お金なんて、借りられるだけ借りて使えば良いよね」みたいな発想が蔓延するんです。だけど、『アリとキリギリス』の喩えではありませんが、好景気の間でも手堅く手元にお金を残してる会社は、「今のうちに、万が一景気が悪くなっても耐えられるだけのお金を貯めておかなければならない」という危機感を持っているわけですよね。だから、現状で(金融機関から)お金を借りられるなら、「借りられるうちに借りておく」というスタンスのほうが良いような気がします。それから、もう1つ考えられることとしては、(新型)コロナの影響もあって、中小企業の割合が「どんどん減っている」と言うか「減りやすい状況になっている」んです。どういうことかと言いますと、製造業も建築などの下請けがあって然る業界で、「請負ってくれるところがない」となった場合、仮に「1社だけ」が「値上げしてくれ」と言ってきたとしても、「対応せざるを得ない」わけですよ。要は「競合他社がどんどん減っている」わけだから……。
- 佐藤
- 言い換えると、「強制的にでも単価を上げやすい状況になっている」わけか。だから「淘汰されていく可能性はあるけれど値上げはできる」わけだよね? ということは、「値上げしながら賃金も上げれば良い」わけだよね? それで良いよね?他に何か補足はありますか?
- 蒲生
- 100円均一の『DAISO』で結構面白い事例があって。実はあそこは「100円均一でやってこれなくなってきた」らしいんですよ。
- 井戸
- 最近は「高価格帯」もありますよね。
- 蒲生
- だから、開き直って「300円均一のブランド作ってしまった」ということにして「売価を上げた(※『THREEPPY』誕生は2018年3月、『Standard Products』は2021年3月)」のだけれど それ(『THREEPPY』や『Standard Products』)は、ブランディングしてコーディネートすることで、「消費者からネガティブな目で見られずに、サービスを提供できている」んです。だから、「単に売値を上げる」のではなく、「コーディネートしてあげる」みたいな取り組みも少なからず必要だろうと思われます。
- 佐藤
- ところで、俗に「ステルス値上げ」と言われているやつはどうなの?
- 井戸
- 何ですか、それ?
- 久田
- 「『カントリーマアム』が小さくなる」みたいなアレですよね?
- 佐藤
- そう、それ。 要は「100グラム入りのポテトチップス」が……。
- 井戸
- 「内容量だけ減らされ」て。
- 佐藤
- 「お値段そのまま60グラム」みたいな……。
- 井戸
- 騙されるやつだ!
- 佐藤
- あれ(ステルス値上げ)はどうなの?
- 原
- おそらく「一時的なもの」だと思いますよ?
- 佐藤
- だけど、あれ(ステルス値上げ)は、「実質的には値上げ」だよね?
- 原
- おっしゃる通りではありますね。だけど、あれ(ステルス値上げ)も「長くは続かない」んですよ。なぜなら、例え「値段が上がった」としても、「本来食べたいボリュームのやつが出てきた場合、そっちを買う」わけで。今は企業努力で「量を減らして値段を維持している」わけですが。要するに「量を減らしたとしてもお客さんに満足してもらえる値段で売っていきたいと思っています」の表れが「ステルス値上げ」なので。そうは言ってもこの先は、「値上げに踏み切らざるを得ないほど物価上がっているので、皆さん分かってください」になってくるかと……。
- 久田
- だけど、今や食品などが「どんどん値上がって」いますものね。実際、「ペットボトル入り飲料」なども上がっているので、消費者としては「抵抗はない」と言いますか、もはや「仕方ないな」みたいな感じがあります。
- 佐藤
- それはそうと、「サービス業はどうなる」んですか? それこそ俺らは「サービス業(の事業者)」になるとけれど……。
- 原
- 結局、「人件費が上がる」ことで、「そこに付随する様々なものの価格も上がる」ので。どのみち「上がっていく」話になります。
- 佐藤
- 確かに「上げなければならない」よね。
- 久田
- 「機材が値上がって」いる。
- 佐藤
- 「機材が値上がっている」だけでなく、幸いなことに「人件費も上がってきている」から。だから、良くも悪くも……。
- 井戸
- 売値を上げなくちゃ。
- 原
- つまり、「サービス業だから物価上昇の影響はないでしょう?」ではないんです。「人が動く以上は、それに伴う様々なものが動く」ので、「値上げせざるを得なくなっていく」という……。
- 佐藤
- だけど、言い換えれば、「円安を活かして海外にサービス業を展開できる」わけだから、「円安のレバレッジが利きそう」だよね?
- 原
- そうね。「為替差益が生まれやすい状況」なので。
- 佐藤
- 「物価面で」ね。実際、うち(株式会社アートリー)も海外に「プログラミングやデザイン、 コーディングの仕入れなどを発注していたりする」んだけど。確かに言われれば、「インドネシアなどに発注していたhtmlなどの単価が高くなってきてしまっている」もの。
- 原
- ということは、むしろ「うちが作るよ!」という具合で「海外から仕入れ」たほうが……。
- 佐藤
- そういうことだよね。
- 原
- 今は「海外から受注すべき」でしょう。
- 佐藤
- そういえば、年始に「円安だからむしろコーディングやデザインを(海外から)受注したほうが儲かるんじゃないか?」みたいな話をしていたよね? ということは、その(「海外からの受注で稼ごう」という)発想は「間違ってはいない」わけだよね?
- 原
- その通りです。
- 佐藤
- だよね。ちなみに、「外貨取り入れていく」とすると、どうなるんですか?
- 原
- 前にもお話ししたことがあるかもしれないですけど、「円の力が弱い」原因としては……。
- 佐藤
- 単に「円の人気がないから」でしょう?
- 原
- 確かに分かりやすく言えば、「人気がないから」ですが、「世界共通通貨」の位置付けにあるのは(アメリカの通貨である)「ドル」ですよね? 要するに「ドルの金利幅と円の金利幅の差」が、「人気不人気」に当たるです。現実は「円安になってきている」ので。詰まるところ、「(アメリカ)ドルとの差が埋まる」ようなきっかけがない限りは、これ(円安)は「続きやすい」状況でしょう。
- 佐藤
- そうなると、「なぜだか分からないけど、世界から日本に向けてすごく発注が来るようになっているけれど……」みたいな……。
- 原
- 状況は生まれるかもしれませんよ?
- 佐藤
- だよね? 例えば「文化的なもコンテンツ」であったり、今のサービス業のような「無形知的財産みたいなコンテンツ」もあるよね。いわゆる「伝統的なもの」だけでなく、「新しいもの」……、「アニメ」でも何でも良いと思うけれど、その手のコンテンツが「ばんばん売れていくような状況」になれば、「外貨を取り入れやすく」なるから。「また円が人気になってくるよね」みたいな話だから。それは1つのシナリオとしては……。
- 原
- 「ある」とは思います。ただ、つい最近「輸入と輸出の指数が出た」のですが、今は「モノが不足している」ので、結果として「輸入指数が減っている」んです。ところがその代わり「輸出指数が上がっている」ので、「アンバランスな状況」のわけです。だから、アメリカ大統領で言うと、レーガン(※第40代アメリカ大統領、ロナルド・レーガンのこと)ぐらいの頃(1980年代)の話になりますけど、「貿易摩擦」の話がしこたま出てた時期があって……(※2 日米貿易摩擦が問題になったのは「1960年代半ば〜」なので、実際には20年ほど断続的に続いていた)。要は為替レートが戦後(1973年:昭和48年)に「1ドル360円」の固定相場制から変動相場制に変わって。今ぐらいの金額になる前 ……。(1ドルが)「120円〜130円」ぐらいの金額になっている時に、「為替摩擦の話がよく出ていた」ので。こうした状況が「再び生じる懸念がある」と言いますか……。
- 佐藤
- それ(貿易摩擦と)はどんな状況なの?
- 原
- アメリカから見た場合、「輸入が多くて輸出が少ない」という(貿易収支額の)ギャップが大きいことで……。
- 佐藤
- 「時々聞くやつ」だよね? よくトヨタなどでも言われる……。
- 原
- そう。アレです。
- 佐藤
- ということは「関税をかけていく話になる」のかな?
- 原
- そうでしょうね。「関税」だけでなく、「 貿易条項も変わってくる」だろうとは思います。
- 佐藤
- ところで日本は外交的な面ではどうなんですか? 強いの? 弱いの?
- 原
- 為替動向に関して、日本は「そこには国として一切触れません」というスタンスを貫いているんです。なぜかと言うと、「為替相場は市場価値で決まるものだから」です。その点は「あえて言ってこなかった」けれど、そこ(為替相場の市場価値)には「外交的圧力がかかる」場合もあるので。一応、これまでの官僚たちは「何とか耐えてきた」けれど、これほどの物価の急上昇が起きやすい状況になってくると、(為替相場の急激な変動を)「なかなか抑え込みづらい」と言いますか……。
- 佐藤
- 「全て繋がっている」みたいな「単純なことではない」と思うけれど。物価が高くなって、モノの輸出も制限されるとなると、「知的コンテンツなどでばんばん外貨を取り入れる日本人」みたいになれば、「ちょっとイケてるよね?」と言うか「カッコ良くね?」みたいな感じになりそうだけど。……それこそ「クールジャパン」だよね。
- 原
- ある意味ね。だけど、これから先は「円を持ち続ける人が減ってくる」はずですよね。
- 佐藤
- それはあり得るかもね。
- 原
- 『ドル建てで持つ』みたいなスタンスが強くなっていくようには思うよね。
- 佐藤
- 実際、(円は今、)「相当な不人気」らしいものね。普通であれば、今回の「ウクライナ情勢」のような「世界規模の大事件」が起きると、「割と円が人気になる」と言うか、「買われていた」らしいけれど。だけど現状では、「ほとんど全てドルに流れていってしまっている」から、(円自体が) 「今、相当不人気なのか」と言うべきか……。
- 蒲生
- おそらく、「この10年で変わった」んでしょうね。10年ぐらい前……、ブッシュ大統領(第43代アメリカ大統領、ジョージ・W・ブッシュ(別名:息子ブッシュ))の頃のイラク戦争が起きていたくらいの時期に「84円」かな? が最大の円高で……(※最大の円高は2011年10月31日に記録した「1ドル =75円32銭」) 。だけど、これまでの話で出たように、「円の価値自体が様変わりしている」ので……。
- 佐藤
- 事実、「50円ぐらいの差がある」わけだから、「すごい」よね。
- 原
- 本当に「すごい差」ですよ。だから、「この先円の価値がどのぐらい落ちていくのか?」は、「皆さんに関心を持っていてもらいたい」です。要は「『いつまで安全に円を持っていられるの?』という疑問を持っていてもらいたい」と言いますか……。
- 佐藤
- (本日の課題は、)「物価高騰する市場で企業が勝ち抜くには?」ですけれど。結局、「どうしていくべき」なんですかね? おそらく、「多角的に様々なことをしなければならない」のだろうけど……。
- 原
- 確実に「そう」でしょうね。「円だけに依存するのではなく、ドルも持たなければならない話になってくる」わけですから。
- 佐藤
- だから、「海外に向けて何かしらのアプローチをしていくこと」が「方向性としては合っている」わけか。
- 原
- おっしゃる通りかと思います。
- 佐藤
- 要は「内需が厳しい」わけだから、「華僑」ならぬ「日僑」みたいな感じで、海外に向けて自分たちのコンテンツやモノを売ることで外貨を取り入れて、「おお、日本、すげえじゃん!」みたいな感じで「円の価値を上げていく」みたいにしていくことなのかな?
- 原
- おそらく「そう」でしょう。
- 佐藤
- 一番の課題解決がソリューションになってくるかな?
TOPICS
ソリューション
- 井戸
- よろしくお願いします。
- 佐藤
- 本日のソリューションはこちらです。「語学教室に通おう」。文字合ってるよね?(※佐藤は2021年1月14日放送の第11回『デジタルビジネスの税負担』のソリューション発表時に「税務署」の「署」の字を書き損じて、一同からツッコミを喰らったことがある)
- 久田
- 合ってます。
- 佐藤
- 「海外に向けて日本のあらゆるものを売っていきましょう!」としたくても。基本的に「日本人はおおよそ日本語しかしゃべれない」みたいな有り様だから。そこが「最大の課題」のような気がして。実際、「越境ECでモノを売る」にしても、「英語」なり「中国語」なりは少なくとも出さなければならないし。そのためには、「英語や中国語を学ぶ」必要があるわけで。……もしかしたら「ヒンドゥー語」かもしれないけど。「海外に向けてモノを売っていく」のであれば、まずは「語学教室に通う」ことから始めていければ……。
- 井戸
- つまりは「海外への抵抗感をなくそう」というところですね?
- 佐藤
- そういう解釈でお願いいたします。ありがとうございました。それを思うと渡邉さんは今年、「パリに商品を出す」し。「サンフランシスコ」でしたっけ? ……「ブルックリン」か。
- 渡邉
- 「ニューヨーク」の……。
- 佐藤
- 「ブルックリン」ですよね? で展開されてるから。ちなみに、(海外のお店への出品は)どうやっているんですか?
- 渡邉
- 実は、僕自身は「作っているだけ」なんです。(外国語は)「しゃべれない」し、「しゃべる気もない」ので。だけど、偶然とは言え、「オランダに住んでいて、日本のものをヨーロッパで売ったり広めていったりしたい」という方と繋がれて。その人は「日本のものを売りたい」し、僕は「(自身のブランドを)海外で売りたいけれど、『売り込み方が分からなかった』」ので、言わば「渡りに船」だったわけですよね。日本であれば、自分の脚で「ショップを突撃して」売り込めるけれど、(「言葉の壁」が立ちはだかる)海外の場合は、「難しい」わけですよね。だけど、それ(ショップへの飛び込み営業)の「代行人が見つかった」わけですから。そうは言っても、オランダからパリまで3時間ぐらいかかる(※フランス版新幹線であるTGVを基本とする高速鉄道『タリス(Thalys)』を使っても、オランダ・アムステルダム -フランス・パリ間は約3時間20分かかる)みたいですけど。だけど、実際に行って、セレクトショップに営業をかけてくれたおかげで、「(『VEDUTA』を)取り扱いたい」と言ってくれたパリのショップオーナーさんと繋がれて。だから、「8月から(パリのショップに)並ぶ」わけですけど……。
- 佐藤
- ということはある種の「パートナーに恵まれた」わけだね。確かに、「語学教室に通うこともアリ」だけど、「リアルな話」をすると、「海外で(営業代行を担ってくれる)エージェントやパートナーを見つけ」られれば……。
- 渡邉
- 最善策は、丈亮さんがおっしゃるように、「全部自力でできること」だと思います。実際僕も「英語もフランス語も不自由しないだけの語学力があれば最高」ですけど。とは言え、人には「それぞれの役割がある」と思うので。
- 佐藤
- 今の時代は「共に創る」と書く「共創社会」だからね。要は「自分だけが勉強している」では「出遅れる」から……。
- 原
- 先に成果を出さなければならないし。
- 佐藤
- 何だか「一気にソリューションを覆された」感じが……。
- 井戸
- 書き直します?
- 佐藤
- 大丈夫です。今日はこれでいきます。ありがとうございました。
- 井戸
- 次回以降の放送はこちらの通りとなっています。来週も木曜日の夜10時にお会いしましょう。次回もお楽しみに。
- 佐藤
- 最後までご視聴ありがとうございました。さようなら!
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