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2022.06.02 放送分
【クールジャパン戦略】日本の文化を救えるか?
第83回アートリーアカデミア
THEME
【クールジャパン戦略】日本の文化を救えるか?
2022年3月、内閣府知的財産戦略推進事務局が主催する「クールジャパン動画コンテスト2021」の結果が発表されました。最優秀賞はザ・リッツ・カールトン日光の動画で、414作品の中から選出されました。本コンテストは動画を通じて、新たな日本ファンの開拓や訪日観光の再活性化につなげていく取り組みで、世界中から注目を集めました。クールジャパン戦略は日本の文化を救えるか?アートリーアカデミアでソリューションを見出します。
TOPICS
ニュースの話題
- 佐藤
- 始まりました。アートリーアカデミア。
- 井戸
- 本日のテーマはこちらです。「クールジャパン戦略。『クールジャパン動画コンテスト2021』最優秀賞作品は、『Deep Nikko』。今年(2022年)3月、内閣府知的財産戦略推進事務局が主催する『クールジャパン動画コンテスト2021』の結果発表がありました。最優秀賞は、414作品の中から選出された『ザ・リッツ・カールトン日光の動画(『Deep Nikko』)』に決まりました。このコンテストは、『新たな日本ファンの開拓』や『訪日観光の再活性化につなげていこう』という取り組みで、世界中から注目を集めました。」
- 佐藤
- (今回のテーマは)「クールジャパン(戦略)」ですけれど。
- 蒲生
- 2010年に経産省が「クールジャパン室」を開設しまして。その後、2015年に「官民共同プラットフォーム(※『クールジャパン官民連携プラットフォーム』のこと)」が立ち上がって。以降(2020年の)「(東京)オリンピック」(※コロナ禍により実際に開催されたのは、翌年の2021年)や(2025年の)「大阪万博」と言った「国際的なイベントが集まっている」ので、「このようなコンテストが開催されている」わけです。
- 佐藤
- ちなみに、このコンテストは「何回続いている」んですか?
- 蒲生
- 今回で「2回目」ですね。(20)20年から始まっているので、正確に言うと、今回が「2回目の表彰式」だったわけです。
- 佐藤
- これは「外国人には見られている」の?
- 蒲生
- 「外国人にも見られてはい」ますけれど、「優秀作品賞は8人の審査員によって決められている」ので……。
- 佐藤
- ちなみに「(政府主催の)プロモーション企画」ではないのだよね?
- 蒲生
- (『クールジャパン動画コンテスト2021』は、)単なる「内閣府主催のコンテスト」になります。とは言え、SNSアカウント(Twitter)を持っているので、「日本が好きな 外国人」が「フォローしている」わけです。
- 佐藤
- ということは、「基本的にはSNSで発信している」わけ?
- 蒲生
- 「内閣府」という「権威性の高いアカウント」ですからね。
- 佐藤
- 「動画コンテスト」というアイディアは「悪くない」とは思うけど、「周知」と言うかまだまだ「認知が弱い」という印象はすごく感じていて。要は「プロモーション」の観点から見ると、「どうなのだろう」と言うか……。(『Deep Nikko』自体の)「映像はすごかった」よね?
- 久田
- カッコ良かった。
- 井戸
- 「きれいだった」ものね。
- 佐藤
- 「音楽も良かった」よね? ……(『Deep Nikko』は)「自然(風景の映像)」から始まって……。
- 渡邉
- 「釣りをしている」みたいなシーンもありましたよね?
- 佐藤
- そうかと思えば、「『ここは日光だったな』と思い出さされるシーン」もあって。……途中で出てきた(神社のような雰囲気の)建物は「(日光)東照宮」だったのかな? それで何かの「儀式」か「セレモニーのようなワンシーン」があって……(※おそらく毎年5月17、18日に開催される「春季例大祭」の一幕かと思われる)。……確かに、「魅力は引き出せる」だろうけど。とは言え、(動画そのものは、)「リッツ(・カールトン日光)の顧客なら見る」かもしれないけど、あれ(『Deep Nikko』)を「一般向けにSNSで流した」として、「ウケるかな?」と言うか……。
- 原
- 「興味を惹けるか?」ですか?
- 佐藤
- 「今の若い世代」と言うか「刺さる層を狙って行っている」ことは分かるんだけど。そうは言っても、「拡散させる」にしても、「コンテストの趣旨に合わせて作ったものを出してるから」だろうけど。「コンテスト自体に注目してもらう」と考えると、「楽しめるような要素」は必要な気がする。だから「ホームページ」にしても、あんな「簡素な作り」ではなく、「フックになるようなコンテンツを小出しにしていって、徐々に興味や関心を引き出させる」みたいな戦略にしなければ。だから「企画自体のフックが少なからず弱い」ような印象は「すごく」感じた。
- 原
- (現状のサイト構成では、)「興味のある人しか見ない」感じですものね。
- 佐藤
- 良くても「関係者止まり」みたいなね。
- 久田
- 「企業自体の制作スタンスもコンテスト向けにはなる」だろうから。先ほど丈亮さんがおっしゃっていたように、「初回の方向け」ではなく、「既に(日本に)興味を持っていて、『(次回の)日本旅行はどこに行こうか?』となった時用」ぐらいの感じで、「日本(そのもの)を推してはいない」ですね。
- 蒲生
- おそらく運営側の思惑としては、「『日本人がコンテストをやっていることを知って、動画を自分のSNSなどで外国人の友達に拡散してもらいたい』みたいなことを思っている」と思うんです。だけど、社長がおっしゃったように、「一部の関係者だけが見て、盛り上がって終わっている」ような状態だと思います。
- 佐藤
- だから、もう少し「絡ませ方」を……。ナベちゃん ……、渡邉さんはどうでした?
- 渡邉
- (『Deep Nikko』の)制作者がおっしゃるには、「自然と文化や歴史などがテーマだ」とのことです。あの映像(『Deep Nikko』)もそうですけど、先ほど蒲生さんがおっしゃっていた「万博」で言うと、去年(2021年)の10月から今年(2022年)の3月まで、「ドバイ万博」(※本来ドバイ万博は2020年10月20日〜2021年4月10日までの日程で開催予定であったが、世界的な新型コロナウイルスの流行を受け、2021年10月1日〜2022年3月31日に会期が変更された)があって。中でも「最も予約が取りづらいパビリオン」が「日本館」だったらしくて。実際に(ドバイ万博の日本館は)「デザイン部門」で「金賞を受賞している」んです。ちなみに、その「1回前」に当たる「2015年のミラノ万博の金賞」も「日本館」だったんです。(※2 2015年のミラノ万博は、2015年5月1日〜10月31日の日程で開催された)
- 佐藤
- それ(2015年ミラノ万博での金賞)も「デザイン部門」で取ったの?
- 渡邉
- (2015年ミラノ万博も今回のドバイ万博も)共に「デザイン展示部門」での「金賞」です。ちなみに、ドバイ万博の日本館に関しては、「実際に行った人は『何を良かった』と評価しているか?」というと、 「日本館は来場者に専用のスマホを渡されて、『好きな季節』や『自分の国 』みたいな情報を入力した上で『館内を回っていくアクティビティ型』だったらしくて。しかも、『(展示映像の)ラストシーンが違うものになる」という「マルチエンディングのような演出」がされていて。「空間自体は同じ」なのだけど、毎回「カスタマイズされたエンディングが用意されている」みたいな。ちなみに、他の国のパビリオンは、「常設展示型が多かった」みたいで。その分、「単に飾られているものを見ていくだけでないユニークさがあった」ようで。それから、「自然や文化、歴史を取り上げつつ、『最先端テクノロジーとも融合させているところ』が面白かった」らしくて。だから、「クールジャパン」という観点で探ると、「直近2回の万博で評価されている要素を前面に押し出していくこと」が、「日本の生き残る道である」ような気がします。だから、「歴史」のように「過去を温める人たち」と「外のテクノロジーを吸収する人たち」に分岐して。さらに両者が連携して「今を作っていく」ことも必要なように思います。要はこの両輪が噛み合っていかなければ、「(クールジャパン戦略の成功は)難しい」ように思います。
TOPICS
フリップ解説
- 佐藤
- 今日のテーマは「クールジャパン戦略」ですが、そろそろ「課題」を見ていきましょうか。
- 井戸
- 「クールジャパン戦略。課題:クールジャパン戦略を成功させるには?」
- 佐藤
- 「フリップがある」とのことなので、ひとまず見てみましょう。
- 井戸
- 「クールジャパンが目指す姿」という参考資料です。「現在の問題点」(CJの目的が共有されていない・プロダクトアウト・世界の視点を意識していない・日本の魅力の本質を掘り下げられていない・国内外で良い取り組みが行われているが、ネットワーク化されていない(連携不足))と「目指す姿」(CJの狙い、価値観の共有・戦略的に「日本ファン」を増やす・世界の視点を基にしたマーケットイン・外国人との協働・日本の魅力の幅広さや奥深さを追求・関係者をネットワーク化して、連携を強化する)の2項目に分けられています。
- 佐藤
- 徹郎さん、補足事項等ありましたら、お願いします。
- 蒲生
- 「CJ」とは「クールジャパン(Cool Japan)の略号」になります。それから、「プロダクトアウト」と「マーケットイン」という専門用語が出てきたので、こちらを片付けておきましょう。「プロダクトアウト」は「作ったものを売る」ことで、「マーケットイン」は「売れるものを作ること」を指します。
- 佐藤
- すなわち、「プロダクトアウト」は「良いものを作れば売れるでしょう」という「マーケティングの要素が一切ない概念」なわけだね? さらに言えば、「デザイン思考」で見ても「離れている」し……。 だから結局、「マーケティング要素の欠如」が「大いなる課題」のような気もするのですが。(原先生は)「どう」思われますか?
- 原
- 今回のコンテストの結果には、「ザ・日本」という印象が「すごく出されてしまっている」ように思います。要は、佐藤社長がおっしゃったような「製造業的」な「『良いものを作れば見てもらえる』みたいな発想」が「些か強すぎる」と言いますか……。だから、「発信する力」や「共感する/してもらう力」を全面に出した上で、「商品があること」を「あまりにも打ち出していない」し、「打ち出す努力もしていない感じすらする」んですよね。だから、「外部環境」と言いますか「外部の人間を入れる」ことで、そこ(日本の魅力を発信していくこと)を「強化した上で打ち出し」て、「 外国人が『見たくなるもの』を提供していく」べきだと思います。なぜなら、(本来であれば日本は)「クールジャパンを訴えていく側」なので。「見てもらう」ためには、「何であれば興味を持ってもらえるのか?」を「分析」しておいて。「明確なものを発信していくことができていない」と言うか、「すごく弱いように感じている」ので……。
- 佐藤
- 本当に「その通り」だと思っていて。そもそも一括りに「外国人」と言っても、「どこの国のどんなターゲットに届けたいか」が……。要は(想定してしているペルソナの)「性別」や「年齢」「国籍」などを踏まえて、日本の「何に潜在的な興味を持っているのか」をマーケティングしなければ……。事実、「日本は歴史が長い国(※考古学的に言えば3万年、紀元節で取れば2700年ほどの歴史がある)」だし、「様々なコンテンツを持っている」わけだから。それ(日本が持っている様々なコンテンツ)を選別していくと、「中東に刺さるコンテンツ」や「アジアに刺さるもの」あるいは「欧州やアメリカに刺さるもの」みたいに「細分化される」はずだから。だから、「大雑把で構わないから最低限のマーケティング」はしなければ、「本当のクールジャパンは伝わらない」気がするよね。
- 佐藤
- ところで、渡邉さんは「着物を現代カルチャーとして再構築させようとしている」わけですよね? だから、そうした視点では(自身のブランドを)どうお考えですか?
- 渡邉
- 確かに、「外国人による購入」も意識してはいますが、僕自身は「現代日本人のための服」が意識としては「大きく」て。例えば直近では「石見神楽」の「面師(神楽で使うお面を作る職人)」さんとコラボした商品(※『Face 2 Faith』のこと)を開発しまして。その方(コラボを承諾してくれた面師さん)は、「石見神楽」という島根県に何百年と受け継がれてきた伝統舞踊で使うお面を作っているいわゆる「伝統工芸の職人さん」なんです。だけど、その(石見神楽の)お面は、後継者もどんどん減っていて、「衰退してきている」し、そもそも「お祭りの時しか需要がない」わけですよ。それにこの手のお面を買う人は「物好き」と言うか、「ご老人や骨董好きな人が持っている」みたいなイメージがありますよね。だから言い換えると、「若い人には接点がない」わけですよ。だけど、「コロナ禍になった」ことで、「誰もがマスクを付けなければならない」状況になって。だから、「普段使っているマスクと石見神楽のお面がマグネットでドッキングする」みたいな構造の製品にしたんです。なぜなら、「日本人はサングラスをあまり好まない」と言いますか「目で会話する民族」だと思うので。だから、「目は隠さず、ここ(鼻から下)だけのハーフマスク」にして。そのおかげか、日本人の場合は「パフォーマー」や「マスクもファッションの一つとして、他人と被りたくない人」からは、「日本のお面の要素が素敵」と興味を持っていただいて……。もちろん、東京のセレクトショップでは「海外の方にもご購入いただき」ましたけれど。だから、「プロダクトアウトとマーケットインの両方を兼ねる形で生まれた製品」だったわけですね。
- 佐藤
- つまりは「 狙って作った」ということ?
- 渡邉
- 「狙った」と言いますか……。「現代の感覚」……、「マーケットインとプロダクトアウト」で言えばそうかもしれませんが、主体として売り出したかったのは、「昔からの伝統美」です。
- 佐藤
- 言い直すと「マスクとドッキングできるようにした」ところが、「マーケットインの要素」だったわけですか?
- 渡邉
- 大事なことは、「ミルフィーユのように過去と現在が織り重なっていること」なんです。要は「昔からのことをやり続ける人も大事」なんです。仮に「新しい感覚だけあれば良い」のであれば、「最新技術さえあればカバーできる」のでしょうけど……。そうは言っても、「何千年もの日本の歴史の中で培れてきたものをやり続けている人たち」がいるのだから。その人(伝統工芸士)たちには「リスペクト(敬意)を払っていこう」と。だけど、代わりに「マーケティングは不得手」かもしれないから。だから、「現代人が何を求めているか」と言いますか、「こんなものが求められているよ」や「こうした作りのほうがファッショナブルだよ」みたいに「センスを共有し合わなければならない」と思っていて。要するに、「現代文化を主体にしている人たち」には、「マーケティングなどのノウハウ」はあったとしても、「伝統に対する見識はない」わけですから。だから「職人さんたちの技術を頼りながら、上手に連携していかなければならない」わけです。とは言え、「どっち付かず」にならないよう、「過去を深掘りする人」と「未来に行って」……。
- 佐藤
- 「再構築する人」?
- 渡邉
- 要は「伝統」のベクトルから「離れれば離れるほど、面白いものが生まれる」わけですから……。
- 佐藤
- 企業で考えると「非常に分かりやす」くて。「生産開発」と 「プロモーションに関わる営業や販路開拓」は「考え方としては別々」なんだよね。だから、「行政はどこに力を入れてくれるの?」となれば、「伝統の継承にお金を出すこと」も「1つの方法」だとは思う。だけど、視点を変えて、その人(伝統工芸士)たちが、「自分たちから発信していく」のであれば、そこを支援することも、「行政がやるべきこと」だよね。例えば、先ほどの「石見神楽のお面のやつ(※『Face 2 Faith』のこと)」でも、仮に「世界的なヒット商品にまで成長できた」とすれば、「補助金に頼らずとも、顧客(ファン)から収益を得られるようにしていく」みたいな「ロールモデルを作ること」が、「本当の意味でのクールジャパン」のように思うんだよね。要は「そこ(顧客/ファン)に対する販路を作ること」は、「行政の仕事ではない」と思っていて……。だから、「プロモーションをする人」のであれば、渡邉さんの友達で、『BECOS』という(伝統工芸品を通販している) ECサイトを運営されている「(樫村)健太郎さん」という方がいらっしゃいますが、あの手のところに「行政が遠慮なく補助金を入れてくれ」れば。(予算が増えることで、)「やれることの範囲が広がる」はずだろうから。そうやって、「プロモーションする側と生み出す側が融合しながら発信していくこと」が本来の「クールジャパンがやっていくべきこと」のように思います。……そろそろ、本題に戻りましょう。
TOPICS
テーマ討論
- 佐藤
- 渡邉さんが言われていたように、「プロモーション」と「開発」は「分けていくべきである」とは「本当に思って」いて。実際、「クールジャパン戦略」について調べていくと、「失敗しているのではないか?」みたいな論評がネットで「ちらほら出ている」んだよね。要は、「どういうことか」と言うと……。……ところで、「クールジャパン戦略の発足」は「いつ」でしたっけ?
- 蒲生
- 2010年に経産省で「クールジャパン室」という部署が設けられて。その後、「他の省庁にも波及した」流れです。
- 佐藤
- ちなみに、(徹郎さんは)「クールジャパン機構の問題点」みたいな話は何か把握している?
- 蒲生
- いろいろと「知り」ましたよ。
- 佐藤
- それなら話を進めて構わないか……。それで、「なぜ補助金まで出しているのにクールジャパン戦略が上手くいっていないか」と言うと、確か、「クールジャパン機構の貸借対照表と損益計算書が出ていた」んだけど、累積赤字が「309億円」にもなっていて。とは言え、国からは累積の出資額が「1000億円以上」あるんだけどね。
- 原
- 「全然釣り合っていない」ということですね?
- 佐藤
- 要は(機構自体が)「赤字を計上していても、何とも思っていない」わけで。……だから、「言い方が良くない」かもしれないけれど、「コロナ禍による事業再構築補助金をこじ付けでやっている方と変わらない」と言うか。要するに「クールジャパンの補助金目当て」だよね。例えば、「動画を作った」だけで、「これはクールだよね」みたいなノリで役所に行って、「このアニメーション動画は、クールジャパンを体現しているんですよ」なんて言って、「だから、これを申請するのでお金ください!」みたいなことが「成立してしまう」ことが、「水面下にあった」とは言え「問題」であるわけだから。それで結果、「この有様」なわけで。つまり、「本来の趣旨とズレてきている」わけで。実際、渡邉さんは『VEDUTA』という形で「着物を現代風に再解釈している」わけですが、「補助金を受けられているか?」と訊かれたら、「回ってきていない」わけですよね?
- 渡邉
- 「自力」ですね。
- 佐藤
- でしょう? だから、結局は「行政の在り方の問題になる」のだろうけど……。だから「ちらほら」とは言え、「クールジャパンは本当に上手くいっているのか」みたいな声が出るのだろうね。
- 原
- 要するに「問いたいこと」は、「本当に成功させるつもりでお金を使っていますか?」だよね?
- 佐藤
- 「事業をやる」上では、「上手く絡めよう」と「誰もが考える」んだけど。そうは言っても、「クールジャパン戦略」は「日本文化の『継承』や『発達・発展』の話」になるだろうから……。ここまでのところで、何か補足はありますか?
- 蒲生
- 「クールジャパンの目標」について補足させてください。(クールジャパンの)「中間目標」は「外国人に関心を持ってもらうこと」で 、「最終目標」は、「国際社会での日本の発言力を強くしたい」や「日本の伝統関連企業の収益を上げたい」などの「国家的な狙い」になります。
- 佐藤
- であるなら、「もう少しやり方を考えていく必要がある」ように思うよね。(クールジャパン機構の)「やっていること(自体)は素晴らしい」から「否定するつもりはない」けれど……。ところで、渡邉さんは「様々な伝統工芸職人たちと数多くお会いしている」と思いますけれど。彼らのところに「キャッシュ(現金)が流れていった」としても、「発展に繋げられる方とそうでない方に分かれる」気がするのですが、どうお考えですか? 先ほどは「プロモーターは必要」という論調でしたけれど……。
- 渡邉
- 「ないよりはマシ」くらいの感覚ですかね。以前の「不正する人/しない人の話(※おそらく以前渡邉が当番組にゲスト出演した第12回『横行する給付金詐欺』(2021年1月21日放送)のこと)」ではありませんが、「性善説に則って考える」として。その場合、「10人中3人は有効に使えるかもしれないが、7人はもらうだけもらって、何もしない」かもしれません。だけど、「少なくとも3人は救われる」わけですよ。だから、「見当違いのクールジャパンは放って置く」にしても、「職人さんのように、(政府に頼らずとも)自分たちでコツコツやっている人たち」のほうが「残っていける」ような気はしますけどね。要は(自力でやれているところは、)「本気で考えてやっている」わけですから。つまり、「俄」や「クールジャパンに便乗して」などではないわけですから。
- 佐藤
- だけど、「自力でやれているところは」でしょう?結局、プロモーターなどに、「クールジャパンアンバサダーをお願いします」みたいなことで、「お金を払う」と考えたとして。実際に「(アンバサダー 候補を)発掘して、発信できる企画を立てた上でマーケティングして、お金を使おう」みたいに「段取りを踏んで考えられる人たち」も「多くいる」だろうけど 。そうは言っても、「クールジャパン機構という組織をわざわざ作っている」ということは、「そこ(クールジャパン機構)にお金を使っていくことは前提」ですよね?
- 佐藤
- 確かに、「補助金」は「『事業をやること』を申請してもらうお金」だけど、「成果に対して(補助金を)出してもらう」みたいな制度も「作ってほしい」と思うよね。
- 原
- 要は「こんな結果になったから」ですか?
- 佐藤
- 「こんな結果になったから、ボーナスとは言わないけど、補助金くれ!」みたいな感じのね。だけど、最初のうちは、「予算をどうしよう?」となるかもしれないけれど。そこは事業計画書を立てて、銀行に持って行って、デットファイナンスして。それで、あとから補助金が入っても、「事業が上手く行っていれば終了しない」と言うか、「そのまま発展する」わけで……。
- 原
- 「会社の(収益の)基盤さえ組み上がれ」ば、「止まらない」からね。
- 佐藤
- だから、「最初はデットファイナンス」としても、あとから行政の介入を受けて「エクイティ(ファイナンス)になれる」みたいな仕組みができれば……。
- 原
- (クールジャパン戦略は、)「国を挙げての話」だからね。
- 佐藤
- 実際、「実績として投資されるもの」だろうから、「そのための枠を作って欲しい」とは思う。
- 原
- 「 国や県には、『資本性ローン』というものがありまして。日本では、「開発」などの話になることが多いですけど。要はクールジャパンを「商い」と考えて。「成功させられる要素には、国や県からお金を貸します。でも、回収は10年先の話です」みたいに余裕を持たせた資金繰りの算段を立されられる仕組みであればなお良いよね。
- 佐藤
- それは「良い」よね 。「借りた金は返さなければならない」ものだから。「頑張りたいところに現金が入ってくる」のであれば、「予算枠も作っておける」わけだから。その上で 、「申請して認められれば補助金が入ってくる」ような仕組みになっていることが、「一番健全な気がする」よね?
- 久田
- 「ブーストかけられ」ますからね。
- 佐藤
- そういうことだよね? 確かに、「上手くいくかどうか分からない事業や上手くいっていない事業に支援の手を差し伸べる」みたいな「弱者救済」も「大切」だよ? だけど、「クールジャパン」は、「海外で勝ち抜くための戦略」だから。だから、目に見えて伸びていくところ」に「金を投じるべき」であって。つまり、「クールジャパンの名で弱者を救済してはダメ」なんだよ。
- 原
- むしろ「回転率を上げさせる話」だからね。
- 佐藤
- 「クールジャパンでやっていけるところ」にお金を出さなければ……。
- 久田
- 「競わせなければならない」のに、「全員が平等に成長して行って」も「何の意味もない」。
- 佐藤
- 事実、日本文化の中でも、「良かったけれど消滅したもの」もあるだろうし……。そもそも、「本当に価値のないものは残らない」わけだから。
- 久田
- ある種の「自然淘汰」はあるでしょうね。
- 佐藤
- だから、「日本文化は全てが素晴らしい」という前提が「間違って」いて。「良いものが多い」にしても「土壌が良い」から「良いものが育ちやすい」だけであって。「本当に良いものをぶつけたい」と思うのであれば、「伸びているところに資金を回していくべき」だと思うんだ。だから、「(クールジャパン)動画コンテストの話」ではないけれど、「本当に良いものとして選ばれたい」のであれば、「日光に(予算を)出すことも悪くない」けれど、本来であれば、「動画の制作会社に金を入れろよ」と思うんだ。そうしたら、「ブーストされ」て、「コンテストで勝てるような会社がどんどん増えていく」わけだから……。
- 原
- しかも「実績に繋がってくる」話であれば、「誰もが奮って参加する」はずですよね。
- 佐藤
- その通りだよね。そういう仕組みにしていったほうが良い気がする……。何か「ソリューションっぽい感じ」だ。(何のかんので話が)長くなってきたから、そろそろ(ソリューションを)出そうか。
TOPICS
ソリューション
- 井戸
- お願いします。
- 佐藤
- 本日のソリューションはこちらです。「クールジャパン融資を」。ちなみに、実際には「ある」んですか?
- 原
- 聞いたことがない……。
- 佐藤
- 「融資制度としても」ない?
- 原
- その通り。
- 佐藤
- 確かに、「事業として融資を受けられるようにする方法」は「ある」けれど。だけど、「コロナ融資」のような……。
- 原
- ものが「あれば良い」よね。
- 佐藤
- そうそう。要は「コロナ融資」のように……。
- 渡邉
- 「文化庁のやつ」で「伝統芸能などをやっている人たちに向けたもの」がありますよね?
- 佐藤
- あります?
- 原
- あれは「融資」でしたっけ?
- 佐藤
- 「補助金」ではなくて?
- 渡邉
- ……あれは「補助金」なので、「融資ではない」ですね。
- 佐藤
- 「補助金」の場合、「通すこと自体が結構大変だから諦めてしまいがち」だから。だけど、「お金を借りられる」のであれば、「ハードルは下がる」よね? 要は「戻ってくることは前提」だから。例えば「クールジャパン融資で、10年なり15年なり借りられる」とすれば。それで、「(経営者の)世代が変わったら、クールジャパン融資を使って、プロモーションにお金をかけていく」みたいな流れが組めるようになれば……。
- 原
- そうすれば、「伝統なども永続的に継承しやすくなる」よね。
- 佐藤
- 「継承したタイミングでクールジャパン融資が入ってくる」仕組みにできれば。それなら、当事者たちが「どこにお金を振り分けているか」という「後追いができるようになる」わけだから。あとから「良いものを作った」場合でも、「文化庁から認められることで補助金が通って、経営体制ができあがる」ようになれば……。
- 原
- 「もう少し踏み込んで」言えば、「融資としてやりますが、ある程度成果を収めれば、返さなくて良いよ」と……。
- 佐藤
- それが一番良さそうだよね。だから「補助金」とするのなら「それは返さなくて良いよ」みたいな……。
- 原
- そうそう。そうすれば、「さらにやる気も出る」よね?
- 佐藤
- お金の組み立て方も(将棋の)「矢倉囲い」ではないけれど、「いろいろなタイプで組んで」おかなければ。多少ピンチの時でも、「500万なり1000万なりあれ」ば、「全然違う」よね?
- 原
- 本当に 大賛成。「お金を使う」のであれば、そのほうが良い。
- 佐藤
- 良いよね? そうしましょう。だいぶ盛り上がったね。
- 井戸
- 本当、久々にこんな……。
- 佐藤
- 渡邉さんは「日本文化をやっているだけあって」本当に……。
- 井戸
- 「引き出しがすごかった」です。
- 佐藤
- 『VEDUTA』の代表者として「クールジャパンを代表している」わけだから……。
- 渡邉
- (そもそも、アートリーアカデミアへの出演は、)「『マッチングアプリのトラブル』以来」だったので……。(※2021年1月7日放送の第10回『マッチングアプリのトラブル』は、渡邉氏の初出演回。正確には、同年同月28日放送の「第13回『人気コンテンツの海賊版商品』以来」と言うべき)
- 佐藤
- 「前回出演された」ね。
- 渡邉
- だから、「マッチングおじさん」みたいになっているので……。
- 佐藤
- 本当に今日は「良かった」です。
- 渡邉
- 「伝統工芸とのマッチング」を頑張りました。
- 井戸
- 上手い! まとまりました。次回以降の放送はこちらの通りとなっています。次回も木曜日の夜10時にお会いしましょう。来週もお楽しみに。
- 佐藤
- 最後までご視聴ありがとうございました。さようなら。
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